それは3月初めのことだった。
「音楽がお好きのようですが、コンサートに行かれることってあるんですか?」
「いやあ、わざわざチケットまで買って行くことはまずないですね~。」
「チケットが2枚あります。丁度、その日は用事が出来て行けなくなりましたので、よろしかったらいかがですか?」
「えっ、いいんですか!それはありがたいですね。お言葉に甘えて預からせてもらいます。」
朝のウォーキング仲間のNさんから実にうれしいお申し出。単に健康のために”良かれ”とやっていることに、こんな余禄が付いてくるのだから、交流の輪はじゃんじゃん広げるに限る(笑)。
タイトル : 「チェロとピアノのプロムナード」
演奏者 : レオニード・ゴロホフ(チェロ)&林ゆ美子・星野美由紀(ピアノ)
期 日 : 2013年3月15日(金) 18時30分~
場 所 : 「音の泉ホール」(いいちこ総合文化センター)
演 目 : ☆ バッハ「無伴奏チェロ組曲 第2番ニ短調」
☆ グリーク「チェロ・ソナタ イ短調」
☆ ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ 第9番イ長調作品17“クロイツェル”」(チェロ版)
まさかチェロの生演奏を聴くチャンスがこんなに簡単にやってこようとは思わなかった。しかも名曲の誉れ高いバッハの無伴奏チェロ組曲とは願ってもないこと。
それに北欧のリリシズム漂うグリークの作品は好みである。「ペールギュント」「ピアノ協奏曲イ短調」は20代の頃の愛聴曲。しかしグリークにチェロ・ソナタの作品があるとは知らなかったのでこれも楽しみの一つ。
さて、頂いたもう1枚のチケットの相方を探すとなると、生粋のクラシック・ファンとしてすぐに思い浮かぶのがオーディオ仲間の湯布院のAさんである。お誘いすると、ちょうど当日は日程が空いているとのことでご快諾を得た。
そして、前日の14日(木)になってAさんにご連絡。
「明日のプログラムはバッハの無伴奏チェロ組曲第2番です。本番を聴く前に我が家で同じ曲を試聴したいと思いますのでよろしかったらちょっと早めにお見えになりませんか?カザルスとロストロポーヴィッチが演奏したCDを持っていますのでどうぞ。」
実を言うと、こういう機会じゃないとバッハの作品を聴こうって気にはならないのが本音。
この2組のCDのうち、カザルス盤は専門誌を読んで激賞してあったので購入したものの、まさに積ん読(つんどく)状態だし、ロストロポーヴィッチ盤に至ってはずっと昔、尊敬していたK先生(故人)からいただいたものである。
ここでK先生についてちょっと触れておくと、大分市の大病院の院長先生で、ご自宅の敷地に広大なリスニングルームを作られ、そこにタンノイ・オートグラフをドカンと据えられてクラシック専門に聴かれていた。当時は、まだまともなオーディオ・システムを持ってなかったので、ちょくちょくお邪魔してはよく聴かせてもらったものである。
それはさておき、バッハの音楽はいまだに自分の前に大きく聳え立つ未踏峰の険しい山である。「無伴奏チェロソナタ」は全6曲に分かれているが、すべてが同じように聴こえて番号の区別がつかないというお粗末さだし、歴史的な名演とされるカザルス盤とロストロポーヴィッチ盤の良し悪しもつかないという“体(てい)たらく”である。
今回の生演奏会でバッハが少しでも身近になる契機となってくれればいいのだが・・・。
さて、我が家の試聴会だがオーディオ的興味も捨てがたいところがあって、二つのシステム、「JBL3ウェイシステム」と「AXIOM80」のうち、いったいどちらがチェロの再生に向いているのだろうか。
JBLは「擦(こす)る音」には弱いが、我が家の場合はウーファーユニット(D130)をバックロードホーン付の大型ボックスに容れているので、全体のスケール感への不安はまったくないのが強み。片や「AXIOM80」の方はヴァイオリンやチェロなどの「擦る音」にはめっぽう強いが、低音域がボックスの容量のせいでやや貧弱気味。
その辺の兼ね合いが、チェロの再生に当たってどういう影響を及ぼすのだろうかと興味津々。はたして鋭い耳を持たれるAさんの所感はいかに?
ちなみにチェロの周波数帯域を確認すると、倍音を含めておよそ「70~1万ヘルツ以上」である。意外に高域方向によく伸びていることに驚く。ちなみにピアノはおよそ「30~6千ヘルツ」だからこちらは低域方向への伸びが凄い。もう一つ、個人的に大好きな音色のヴァイオリンはおよそ「180~1万ヘルツ以上」である。
試聴の結果と生演奏会の模様は次回で~。