長年、オークションで真空管漁りをやっているとブランド名と型番を見ただけでピ~ンとくることが多くなった。これは明らかに成長の証しではなかろうか(笑)。
今回は「RAYTHEON(レイセオン) VT-244 5U4G 2本の出品」がそうだった。
オークションの説明文は次のとおり。
みなさんご存知の通り、大変貴重な軍箱元箱入りの真空管です。確か同一ロッド番号の真空管と伺っています。以前になりますが、秋葉原の太〇洋で購入して長く保管していたものです。 特にゲッターは、たっぷり有り長く使えるものだと思います。ヘッドの焼けもなく長く使えそうです。
昔の物である事を 御理解いただける方、御活用いただける方が居られましたら、御入札下さい。非常に古い真空管という品物の性質上、ノークレーム、ノーリターン(返品不可)でお願いいたします。写真で判断いただける方、現状にてお願いします。
レイセオン、しかも軍事用(選別球)とくれば涎が出そうな逸品である。また「VT244=5U4G」(直熱管)とあれば汎用性も十分でいろんなアンプに使えそうだし、さらに出自が秋葉原の太〇洋さんとなるとこれ以上たしかなものもあるまい。
「これは絶対落とそう」と思ったが、念のため同じ「AXIOM80」愛好マニアのKさん(福岡)に伺ってみた。とにかく真空管に関してKさんほどの詳しい方にはこれまでお目にかかったことがない。
「オークションの話ですがレイセオンのVT-244が新品のペアで出てますが、これは買いでしょうかね?」
「えーッ、これまで噂には聞いてましたが遂に現物が出ましたか。ちょっとパソコンで確認してみますからお待ちください・・・・・。RCAのVT-244(軍用)はちょくちょく出品されますがほとんど中古です。レイセオン製にお目にかかるのは初めてですがそれも新品ですね~。これはとんでもない稀少管ですよ。今のところ値段も安いしこれは絶対に買いです!自分が欲しいくらいです。」
真空管マニアの中には「レイセオン党」というのがいるそうで、同社の真空管を見つけては型番を問わず買い漁るといわれるほど、品質が良くて間違いのないブランドである。現在はミサイルメーカー(アメリカ)として名を馳せているが軍事産業のため広告宣伝の類はいっさいしないので知る人ぞ知る存在である。
同社はその昔、真空管を作っていた時代があり当時のモノはいまだに珍重されていて、自分もいろんな型番を持っているがいまだかってハズレたことがない。
Kさんの強力な後押しもあって「絶対落とそうと心に誓った」(笑)。
スタート価格は「9999円」で信じられないほど安いが、オークションは生き馬の目を抜く世界なのでとてもこんな価格で収まることはあるまいと踏んで一気に勝負に出た。大奮発していきなり「51000円」で入札。実を言うと手持ちの中古機器を売ったおかげで、日頃に似合わず軍資金がそこそこあってちょっと気が大きくなっている。
落札日時は8月7日(木)の20時14分。今回ばかりはさすがに20時台とあって就寝せずにじっと見守っていると、不思議なことに強力なライバルが現れることなく、すんなり15500円で落札!もう信じられないほどの拍子抜け~(笑)。
翌日(金)、相手側の取引ナビを確認してから急いで該当額を振り込んだ。現品が手元に来るまで、相手側の心変わりがあったりしたら大変だからねえ。
そして手元に届いたのが11日(月)の午前中だった。
舌なめずりしながら、新装なったばかりの「WE300Bシングルアンプ」(モノ×2台)の整流管を「WE422A」(傍熱管)から、この「VT-244」(直熱管)に差し換えて試聴してみた。規格は合っているはずで駆動するスピーカーは「AXIOM80」。
ちなみに、整流管によって真空管アンプの音質はコロコロ変わるので胸がワクワクする。
ウ~ン、これは凄いッ!
あれほどの輝きを放っていた「WE422A」が急に色褪せて聴こえた。この真空管は音声信号のあらゆる情報を何でもかんでも露わに出してくるところがあって、それが長所であり、逆に言えばちょっと節度に乏しい面があったが、「VT-244」は必要な情報をきちんと整理して出してくる奥床しさを感じるし、音が実に柔らかい、そして出力管のWE300Bとは同じ直熱管ということもあってか相性の良さを感じた。
これでは断然「VT-244」に軍配をあげたくなる。お値段はWE422Aの方が圧倒的に高いが真空管は必ずしも値段で決まらないところが面白い。
すぐに、Kさんにご注進。「レイセオンのVT-244が到着しましたので、さっそく422Aと差し換えて試聴したところ段違いでしたよ。」
するとKさん「今だからこそ言いますが、ウェスタンの422Aは以前私も使ってましたが、ちょっとガサツなところがありますね。出しゃばりなので実はあまり好きな球ではありません。それはもうVT-244の方がずっと上です。レイセオンの球は一本芯が通ってますから安心して聴けますよ。これは冗談ですが、〇〇さんにウソの情報を教えてほんとうは自分が落札したかったんですけどねえ(笑)」。
Kさんを悔しがらせたのはこれで2回目である。1回目は今年(2014年)の3月に東京の〇〇堂さんから1940年代製の「刻印付き2A3」(ヨーロッパ)をいっきに3ペア買い占めて「在庫なし」にしてしまったこと。この刻印付き2A3は1枚プレートの2A3(アクチュラス)でさえも出せない音があるそうで、今や我が家の秘宝的存在になっている。
現在、JBL3ウェイマルチ・システムのうちの「375」ドライバーを駆動中でまさに中心的な存在だが、いくら親友とはいえ、「いい真空管=いい音」の前には“友情”なんぞは構っておられないんだから~。まさに「仁義なき戦い」(笑)。
最後に、例によって「シルバー川柳」(全26句)から秀作を3句ほど紹介してみよう。
〇 カードなし ケータイなし 被害なし
〇 LED 使い切るまで 無い寿命
〇 おじぎして 共によろける クラス会