日曜日(21日)の朝方のことだった。
オーディオ仲間のSさん(福岡)から連絡があって、開口一番「オークションに出品されたPP5/400がペアで25万円もの高値を呼んでますよ。お気付きでしたか?」
「はい、PP5/400は我が家のエース級なのでちゃんとチエックしてウォッチリストに入れてますけど、たしか昨日までは8万円前後だったと記憶してます。そんなに値上がりしましたか!これはあまり評判のよろしくない後期版でしたよね。最初期版ならともかく、25万円にも高騰するとはちょっと意外ですね。」
たいへん音が良いよされる直熱三極管のうちでもアメリカの「WE300B」(1950年代以前のオールド)と並んで双璧とされるイギリスの「PP5/400」(英国マツダ)だが、これにも前期製造分と後期製造分とがあって両者の間には微妙な音の差があるとされ後期分は若干値が下がるのが普通である。これまでのオークション相場ではせいぜい20万円もいけば上出来といったところだろう。
するとSさんが「そうなんですよ。いかにも脇に元箱みたいなのが映ってますが、純正箱ではもっと大きくて分厚い土気色のような箱のはずです。どこがいいのやら・・・・。後期分は新品を4ペア持ってますので買うつもりはありませんが、こう値上がりするとうれしいような悲しいような気持ちです。実は初期分が1ペアしか持ってないので欲しいんですけど、こうなるともう高嶺の花ですかね~。」と嘆かれる。
鵜の目鷹の目、生き馬の目を抜くオークションといってもどうもよくわからないところがあって、台風みたいに瞬間風速がときどき吹き荒れることがあって始末に負えないが、これは中国の景気動向に左右されるのも一因のような気がする。
むしろ景気が悪いときに基軸通貨「元」を信用しない中国の富裕層が万一のときに備えて、「元」を貴金属や絵画などに代えて保管する話をよく聞くが、オーディオ機器だって名門ウェスタンなどのヴィンテージ物はその傾向にあるという。
このPP5/400だってその資格は十分にあるので、今後も要注意だ。
結局、冒頭のPP5/400は一昨日(日)の夜「入札54件:266000円」で落札された。高っ!
ちなみに、当方が初期物の「PP5/400」(新品同様のペア)をこれのほぼ半値近い格安で落札したのは2014年の12月31日の大晦日だった。今でも覚えているが珍しく昼間に落札時刻が設定されていたのでタイミングが良かったのだろう。
誰もが忙しい年末のどさくさに紛れて掴んだ幸運だったが、仲間うちでのルール「先に発見した者が優先」に沿って落札したものの今でもSさんからその時の悔やみごとを聞かされる(笑)。
もう一つ高値を呼んでいる機器をSさんから教えてもらった。
THORENS REFERENCE レコードプレイヤー トーレンス
見るからに超弩級ですねえ。
現時点(2016.8.23 早朝)で入札件数68件、3、001,000円。
今さらながら巷には熱心なオーディオ愛好家が居ることに感心するが、前述したとおり背後に中国系の匂いもしないでもない(笑)。
「やたらに調整箇所が多くて使いこなすのが大変だそうです。少し弄っただけで音が激変するそうですからね。しかしアームが3本付けられるのは便利です。カートリッジをMC型、MM型、モノラル型に分けておくとどんなレコードもOKですから。」と、Sさん。
「名にし負うS財閥でしょうから購入資格はあると思いますが、どうされますか?」
Sさん曰く「現在使っているEMTで十分だと思ってます。ちなみに現在レコードとCDを聴く割合の比率は9:1くらいです。レコードに聴き慣れると、CDの中音域の薄さには我慢できなくなります。〇〇さんもそろそろレコードに代えたらいかがですか」
「レコードまで手を広げたらもう身の破滅です。第一、忙しくて時間が足りません。CDを何とか工夫して好みの音にするので精一杯ですよ。」
非常に危険な誘惑を一言のもとにはねのけた。この歳になっての深入りは禁物(笑)。
50分ほどとりとめのない話をしたわけだが最後に九州地方と東北地方のオーディオ愛好家の気質の違いに触れた話を紹介しておこう。単なるひとつの断片をあたかも全体現象のようにとらえるのは危険な話だが、あくまでも「傾向として」という意味なので念のため。
当方の知り合いに、非常に珍しくて貴重な古典管を大量に収集され保管されているマニアがいる。全国の真空管愛好家から問い合わせがひっきりなしに舞い込む状況だが、その方の言によると地方によって傾向が違うとのこと。
たとえば九州地方では、猫も杓子もといっていいくらいウェスタンやJBL、アルテックのスピーカーが多いせいかアメリカ系の真空管の問い合わせが多いそうで、その一方、東北地方からはクラシック向けともいえるヨーロッパ系の珍しい真空管の問い合わせが多いそうだ。
前者が「明るめの音=ジャズ=躁(そう)気質」とすると、後者は「暗めの音=クラシック=鬱(うつ)気質」とも言えるわけで、この狭い日本の中でも地方によってそういう傾向があるというのはたいへん興味深かった。素人考えだが、ひとえに気候すなわち雪深さとか日照時間の差が影響しているような気がしてならない。
そういえば、このブログを通じてメールをいただくのは圧倒的ともいえるほど東北の方が多い。10年近くブログをやっているが、九州管内の見知らぬ方からメールをいただいたことはこれまで一度もない。
自分はどうも九州では異質の存在で、どちらかといえば東北向きの気質なのかもしれないと思う今日この頃です~(笑)。