我が家の音を試聴したいと去る3月中旬に初めてお見えになった熟練のアンプビルダーMさん(大分市内)。
その後、比較的近距離ということもあってお互いに往き来すること2~3回になるが、そのMさんから、つい先日ご連絡があった。
「オーディオ仲間のSさん(愛知県岡崎市)が遠路はるばるお見えになりますのでお出でになりませんか。Sさんはとてもアンプの製作に熱心な方ですよ。」
「いやあ、それは願ってもない話です。ぜひお会いしたいですね。」
新たな知見が得られることにより選択肢が広がるし質的な向上も見込めるとあって我が家のオーディオに人的交流は欠かせない。
先日の午後、いそいそとMさん宅へ出かけた。2回目の訪問なのでスイスイと行き着いたが、クルマでおよそ40分といったところ。
「いやあ、どうもはじめまして~。」と先着されていたSさんにご挨拶。
よくお話を伺ってみると、Sさんは数年前にMさんとオークションでの取引を通じて意気投合され、以降、年に春と秋の二回のペースで愛知県岡崎市から大分市までクルマで駆けつけて来られているとのこと。
わざわざ愛知県からお見えになるほどだから、その熱心さには本当に頭が下がる。
その日は3時間ほど歓談して辞去したのだが、翌日、翌々日と続けてSさんとお付き合いすることになるのだから成り行きというものは恐ろしい(笑)。
まず翌日の話。
Mさんがこれまで作製した大量のアンプ群やスピーカーを保管先として大野郡(大分県の穀倉地帯)の知人宅に預けていたところ、そのご当人がある事情のため長期不在とのことで、「もし使えるような機器があれば持ち帰って試していいのですがいかがされますか」。
またもや「それは願ってもない話です」とダボハゼのように飛び付いた(笑)。
一同、朝の9時に集合・出発して1時間半ほどで鄙びた農家風の大きな住宅に到着。誰も住んでいない住宅に合いカギを使って入り、大きな押し入れを開けたところ、そこはオーディオ機器の山だった!
よくもまあ、これほどの機器を作ったものだ、これではご自宅に収容しきれないはずだと心から納得。Mさんのアンプづくりにかける情熱は半端ではない。
そういえば以前読んだアンプ製作の本にこういう一節があった。
「アンプなんてものは測定器を通してそのデータを眼で確かめ、オシロスコープで波形を眺めるものであって、耳で聴くものではないという説を唱えている方がいます。音楽なんて聴いている暇がありまっかいな、というわけでオーディオの楽しみ方にも様々あるようです。」
これまでオーディオ機器は音楽を聴く道具だと一方的に決めつけてきたが、そうでもない世界があったんですよねえ~(笑)。
話は戻って、前述のアンプ群はTR式が多くて我が家にはマッチングしそうにないのでパスしたが、テクニクス製のツィーターでオッと目を引いたものがあった。
「これを借りて我が家で鳴らしてみたいんですけどいいですか。」「ハイ、どうぞ~」
帰宅してツィーターの型番をググってみると、すぐに「仕様」が表示された。
日頃から感心しているのだが流石にテクニクスやパイオニアの大メーカーの旧製品は「オーディオの足跡」として「仕様」がきっちりと明示される仕組みになっている。
それによると、型番は「EAS-25HH22」 (1974年ごろ)
型式 ホーン型トゥイーター 口径 25×10cm 最大入力 40W インピーダンス 8Ω
周波数特性 1kHz~25KHz 出力音圧レベル 99dB 磁束密度 14,500gauss 重量3.9kg
マグネットはアルニコ型で振動板(ダイヤフラム)はチタン製とのことで、目を引いたのが周波数特性だ。
1000ヘルツから使えるツィーターなんて珍しいし、とても応用が利きそう。しかも音圧レベルが99dBというのも手頃でとても使いやすい。あの有名なjBLの075ツィーターは110dBもあって良かれ悪しかれ使い方にコツがいる。
それに比べてこのツィーターは現用中のJBL「D130」ユニットと出力音圧レベルがほぼ一緒なのでアッテネーターなしで使えそう。
すぐにウェストミンスターの上にセットして試聴してみたところ、とても周波数帯域の繋がりが良くて一気に中高音域が晴れ渡った!4000ヘルツ以下を受け持つSPユニットのJBL「D130」との相性がことのほかヨロシイようだ。ダイヤフラムがチタン製ということもあるのだろうか、中高音域に独特の深みと透明感が感じられる。
良し、当分これで行くことにしよう。
そして3日目の翌々日。
MさんとSさんがおそろいで我が家に試聴にお見えになった。
さっそく、新たな戦力のお披露目だが、まだ(ツィーターを)お借りしている段階なのであまり大きな顔はできない(笑)。
ただ、つい先日Mさんからお借りした「クリスキット」のプリアンプ「マークⅥカスタム」は話し合いの結果、信じられないほどの格安のお値段で譲っていただくことになり我が家の主戦力として大活躍中だ。はたして、このツィーターの運命やいかに~。
さて、肝心の試聴結果だが4系統のスピーカーを例によって順次聴いていただいた。
初めて我が家のシステムをご覧になったSさんは「まったくオーディオ三昧ですね!」と、第一声を上げられたが、最後にどのスピーカーが一番お気に召しましたかと、伺ってみると「グッドマンのAXIOM150マークⅡが中音域が厚くて暖かみがあり一番好きです。AXIOM80のヴァイオリンの音色も捨て難いのですが・・・」とのこと。
「やはりそうですか・・・。」
AXIOM150マークⅡの音は自分で言うのも何だがすでに完成の域に達しており、弄る楽しみがないので日頃は滅多に聴かないのだが、こうして高い評価をお聞きすると素直にうれしくなる。
2時間ほどで辞去されたが、お互いに携帯の番号を確認し合ってから「今年の秋口になったらまたどうぞ~。その頃にはまた変わっていることでしょう。」と、お見送りした。
何しろ我が家のオーディオは同じスタイルでそのまま半年以上続いたことは無い。
しかし、はたしてそれがいいことなのか悪いことなのか、はたまた音が良くなっているのかどうか、定かではないのが残念。
ま、自分さえ楽しければそれでいっか(笑)。