現役時代のこと、ある先輩がいて自分と同じように「釣り」と「オーディオ」の両方がお好きな方だった。
その先輩が仰るには、身体が元気なうちは「釣り」の方に比重を置く、その一方オーディオはいくつになっても熱中できるので後の楽しみに取っておくとのことだったが、当時はまさに同感の思いがしたものだった。
ところが実際にそういう年齢に達してみると、耳の方の寿命(高音域の聴き取り能力)があと何年持つか分からないという恐れに直面していることに気付く。
言い換えると、もうそろそろ「高額投資」は卒業しないとヤバイという自制の念が自然に鎌首をもたげてくる。
しかし、欲しい物は欲しい・・、という「相剋」のなかでオークションに出品された「古典管」を見るたびについ「ため息」が出てしまう。
つい最近もそうだった。
✰ STCの整流管「4274A」
つい先日(9日=落札日)、出品されていたSTC(英国)の「4274A」(整流管)がこれ。
オークションの解説にはこうあった。
「とあるマニアからの放出品。元のオーナーは、かなり以前に専門店で購入、その後、暗所保管されていたものとなります。
すでに亡くなっているので、入手経路や使用履歴等は不明。見たところ焼けや変色はほとんどありません。ゲッターも十分残っているので、まだまだお使いいただけると思います。なお、音出しは未確認です。」
これも遺品ですね。もっとも、愛好家がこんな凄い代物を目の黒いうちに放出するはずがない(笑)。
ちなみに、我が家でも同じ型番の「4274A」(STC)を使っているが、WE300Bアンプがこの球を使うことによって一段と品が良く潤いが出てきて透明感に溢れた音に変身したことを痛感している。
同じようにオークションを利用して2年ほど前に手に入れたのだが、その時はたしか「8万円」ぐらいだったとおもう。高額の真空管を購入するときは必ず古典管の「泰山北斗=北国の真空管博士」に相談することにしているが、
「画像で見る限り程度がいいようです。そのお値段ならお買い得だと思いますよ」とのコメントが強力な後押しになって落札したのだが、いまもって健在で大活躍中。もし同じくらいの値段だったら、もう1本予備に欲しいと思うのは当然だろう。
スタート価格が安かったので、毎日パソコンを開くたびにおさおさチェックを怠らなかったが、落札日が近づくにつれみるみる入札価格が高騰した。
こりゃアカンと途中で匙を投げたが結局、落札価格は「27万3千円」なり!
エ~ッ、「整流管」にそんな値段が付いていいのかと驚いた。さっそく、前述の博士にご注進。
「ああ、STCの赤字付きの4274Aは初期タイプですね。高くなるのは当然ですが27万円とはちょっと想像できませんね。あなたは実にいいときに購入されましたよ」。
ふと、ずっと以前に「整流管」についてコメントしたブログを思い出したので関係部分を抜粋して終わりとしよう。
「40年以上に亘って真空管アンプを愛用しているが、一番の楽しみは何といってもいろんな役割を持つ真空管を手軽に挿し換えながら音の変化を楽しめることにある。
たとえば通常のアンプの真空管の構成は電流の流れに沿っていくと整流管、初段管(ドライバー管)、(インターステージトランス)、出力管といった順番になる。
まあ、この中で最後尾に位置する出力管を殿様とすると、他の真空管はすべてその引き立て役にあたる。いわば主君と家来という主従の関係のようなものだが、中には主君と相性が悪くてご機嫌を損じるあまり切腹を命じられることもあるのでご用心(笑)。
そういう中で整流管については縁の下の力持ち的な存在で日頃なかなか陽が当たらないもののユメユメおろそかに出来ない真空管である。
整流管の役割については今さらの話だが「家庭で使っている交流電流を直流に換える」役目を担っているが、アンプ全体が醸し出す「透明感」や「SN比」を根源的に支配するので絶対に手を抜けない球である。
原則としてはアンプの回路や出力管の規格に対応したものを使うのが無難だが、数字的にかなりの幅があっていろんな型番のものを冒険できるのが非常に面白い。
お値段の方もピンからキリまであっていろんな球が発売されている。たとえば最高峰とされる「WE274B」ともなるとオークション相場は程度にもよるが15万円(1本)ほどになり、そこそこの真空管アンプが1台買えるほどのお値段がするかと思えば、中には整流管の役割を軽んじるというか疎い方がたまにいたりして格安で出品したりするのでそういうときこそ狙い目である。
根気よく「柳の下に二匹目のどじょう」を期待して毎日鵜の目鷹の目だが、やはり自分は生来の貧乏性だなあ(笑)。
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