新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

全国紙の元記者・中村仁がジャーナリストの経験を生かしたブログ
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チュニジア観光になぜ行った

2015年03月21日 | 海外

  テロの犠牲者はもうこりごり

                    2015年3月21日

 

 「イスラム国」で日本人の人質殺害事件が起き、日本中が怒りに震え、安全保障感覚の大切さを思い知らされたばかりです。今度はチュニジアに観光に行った日本人3人が他の外国人とともにテロにあい、命を落としました。イスラム過激派がうようよしている北アフリカになぜこの時期に行ったのでしょうか。不思議でなりません。

 

 日本政府も、被害者のでた他国の政府も「怒りを覚える。テロは卑劣、テロは許さない」といっております。「テロと戦う」といいながら「テロの巣に出かけていった自国民がいる」ことにどんな思いを抱いていることでしょうか。政府の立場からしますと、テロリスト側を非難するしかないのでしょう。テレビ、新聞も同様です。なかなか本音の議論をしにくい問題ではあります。「自己責任で行った」にしても、命を落としては意味がありません。

 

  事前に危険を察知しておく

 

 イスラム問題の気鋭の学者、池内恵氏の近著「現代アラブの社会思想ー終末論とイスラーム主義」(講談社)をたまたま読んでいたところです。「テロや戦争から身を守るためには、短期的にはその発生源と由来を熟知して危険を察知しておき、長期的にはその発生源をなくしていくことに参加していくしかない」。「そうなのだろうな」と思っていた矢先に、今回の事件です。

 

 チュニジアは民主化が進み、中東・北アフリカでは比較的安全な国とされています。西部、南部には危険度が高い「渡航延期勧告」が出されているのに対し、事件が起きた博物館のある首都チュニスには「十分注意してください」程度の警告しかだされていないので、観光客は安心したのでしょう。欧州など他国の観光客もチュニスに入ったところをみると、他国政府も同様で、日本政府に特に落ち度があったということではなさそうですね。

 

 要するに皆、油断していたのです。「そんなのは結果論にすぎない」というひとは最近のテロ事件から学んでいないのです。

 

  テロリストの輸出国なのに

 

 皆が油断しかねませんから、自分なりに、「危険を察知」しておくしかありません。中東、北アフリカ、近接する欧州などでは、いつ過激派のテロがおきるか分らず、実際にパリで事件が発生していらい、そのことは何度、警告されてきたか分りませんね。事件後の報道をみますと、「チュニジアは過激派分子の輸出国で、イスラム国に加わった戦闘員は国籍別では最多の3000人」というではありませんか。テロリストたちはイスラム国から舞い戻ってきたか、その関連グループなのでしょう。「危険の発生源と由来を熟知」という池内氏の指摘はこういうことを含めているのでしょう。

 

 チュニジアは資源に乏しく、観光が経済の柱だそうです。現地政府は当然、「危険な状態だから観光客はできるだけ、こないで欲しい」とはいえないでしょう。それなら観光地などでは、厳重な警戒体制をとっているのかというと、そうではなさそうですね。

 

 襲撃された博物館は議事堂に近接し、当然、周辺は最高レベルの警戒をとっているはずです。それが、どうも議事堂のほうばかりに目が行き、博物館は警戒が手薄だったようで、テロリストは事前に偵察していたといわれます。来館者のボディチェックはしていたのでしょうか。

 

  トルコ観光をやめた知人

 

 大学を卒業したばかりの若い女性を悼む記事を読みました。「これから社会で活躍できるはずだったのに」という箇所は涙を誘います。それなら、もっと用心しておけばよかったのに。たまたま日本人人質殺害事件があったころ、知人が「3月に夫妻でトルコに観光にでかける」といいますので、「大丈夫ですか。どこで何が起きるか分りませんよ」と会う度に申し上げておりました。その人は「結局、やめました」という結論に達するのに、1月以上かかりました。

 

 ビジネスその他で止む得ない時をのぞき、不要不急の観光旅行でリスクを冒すのは、しばらくは見合わせたほうがいいですね。

 

 メディアの報道にも不満があります。事件関連の記事は現地からの続報、被害者周辺の悲しみ、中東専門家によるテロの背景分析などが柱になっています。なぜ「リスクのある観光旅行の見分け方、回避の仕方」といった旅行関係の専門家のアドバイスをどんどん載せないのでしょうか。

 

 

 

 

 



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1 コメント

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テロと旅 (原村)
2015-03-23 22:28:02
こんばんは。
私は中村さんと少し考えが違います。
今回のチュニジアでのテロは交通事故に有ったのと変わらない程度の感覚です。
憎むべきはテロです。
イラク、シリアなどの危険地帯は勿論問題外ですが、フランスでもフィンランドでもカナダでもアメリカでも日本(サリン)でもテロは起こりました。(記憶するだけでも)
どこの国でも起こり得る事件だと思っています。
一部の不満分子が安易に入手できる武器によって自分の確信的な政治使命を遂げようとする人は必ずいます。
そのような意味で交通事故と同じぐらいどこの国でも起こり得ると考えています。
イスラム教の国がすべて危険だとの誤解が心配です。
かつてのIRAの英国などでは危険視しなかったのに、ISやアルカイダの為でしょうか。
知れば知るほどイスラム教は暴力と本来は遠い宗教だと思っています。
政治的テロではありませんが、世界中に暴力の犯罪が蔓延しています。
自己責任だと大上段に構える気持ちはありませんが、危険を回避する努力をしながら見分を広めたいです。
自分のように偏屈な人間も居ると言う事でコメントさせて頂きました。
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