著作権問題を気鋭の学者が言及
2015年3月18日
元NHKの「週間こどもニュース」キャスターだった池上彰さんは、驚くほどいろいろな分野にわたり、おびただしい点数の本を書き、テレビにも出演する有名人です。恐ろしく博学で勉強熱心な人がいるものだと感心するとともに、どうしたらこんな芸当ができるのかと、不思議にも思っていました。やはりそうなのだろうなと私が思う、気鋭の学者が現れました。
池上さんは政治、経済、社会、宗教問題などの数々をとりあげ、分りやさでは絶品の本を書くものですから、便利に思い、愛読してきました。いつも不可解に思ったのは、参考図書、引用文献が何ひとつ書いていない本が多いことでした。「全部、自分で研究、調査したのだろうか。そんなことはできまい」です。参考、引用、転用した原典がどこかにあるはずです。
わたしは専門分野などない一読者ですから、何をどこで調べたかなどまず分りません。出版物の筆者なら分ることはありえます。イスラム問題の気鋭の学者に池内恵氏(東大準教授)がおります。独自の学問的分析でも、独自の情報収集・分析でも最先端をいっていると思います。「イスラム国」問題や人質殺害事件でメディアに登場する機会が増え、著書はベストセラーになっています。その人がブログなどで池上さんについてなんどか言及しています。
どこかの本の転用?
「池上彰本なんて、全てどこかのいろいろな本の内容をもってきている」と指摘しました。池上さんは中東、アラブ、イスラム、宗教問題も幅広く扱っています。池上さんと池内さんの対象分野には重なりあうところがあるので、分ったのでしょう。
「あなたの本には、池上さんの本に載っていたようなことが書いてある」というようなことを、池内さんは言われ、不快に思った経験があるそうです。「順序が逆で、自分の本の内容を池上氏が転用した」という推測ですね。イスラム問題は常時、急展開しており、最新情報をもとにした独自の学説、分析が登場しますから、他人の著書、論文を原典すると、それが分るのでしょう。
そうした経験があるのか、池内さんはこんなことも言っています。「池上=鈴木健二。他人の知識、情報の転用。なんでも知っているようにみえる。人をつかって調べさせている」。やはりNHKで、「クイズ面白ゼミナール」で博学ぶりを発揮したアナウンサーです。なるほど、この2人を結びつけ、池内さんはうまいことをいう。
池内さんが腹立たしく思っているのは、生半可な情報を集め、欧米あたりからの見方をまぶして、もっともらしい国際情勢分析を書いたり、しゃべったりする最近の風潮が有害だからでしょう。特に情報源が少なく、分析が不足している中東、アラブ問題で目立つのでしょう。必死になって情報源、人脈を開拓してきた本物の学者ほど怒りが強いのでしょう。
引用規定を満たさず
著作権法には、引用に関する規定があります。条件を満たせば、他人の著書からの無断引用が認められ、著者に直接、引用の許諾を求める必要がありません。「引用箇所を明示する」、「出所を明示する」、「引用部分が従、本文が主である」などです。学問研究、文化の向上のため、自説を補強するために、法的な便宜を図っているのです。
池上さんの著書には、その明示がありません。もっともこの法律には翻案権の規定もあります。既存の著作物のアイディアを用いて、あらたな著作物を創造することは認めているのです。池上さんの本は、他人の著書、新聞、雑誌を参考にして、時事問題のまとめ本、要約本を出版したとすれば、著作法違反にあたらないとの解釈はできるかもしれません。
参考文献も示さない
一般論はそうであっても、最先端をいく池内さんの著書の内容がどこかに取り込まれていることがはっきりすれば、微妙ですね。学者によっては、引用箇所をいちいち明示するのが面倒なので、巻末に参考文献を列挙しています。池上本はそれすらないのですから、どうなのでしょうか。
こんなブログを書く気になったのは、パソコンを使い、他人の著書、論文を取り込むコピー・ペースト(コピペ)がはやっているからです。パソコンによるコピペは指導教官から厳しく禁止されているし、検索ソフトで発見できるケースもあるでしょう。紙(書籍、雑誌)の場合は、甘いと思います。
池内さんは、経済雑誌の「東洋経済」のイスラム特集にもクレームをつけています。外部の執筆者(仮名)の執筆・編集による特集のなかに、最新刊のご自分の著書からの転用が多数あったというのです。引用の明示もなく、黙認できないと、主張しています。雑誌には自社編集ではなく、この手の外部編集による安直な特集が少なくありませんね。
膨大な数の読者を持つ池上さん、著書の執筆方法を著作権法との関係で公開してもいいのではないですか。参考文献や出所を明記したほうがいいではないですか。
なので、引用の問題にはなりませんよ。