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ノーベル賞が泣く野依理事長の辞め方

2015年03月25日 | 社会

  強すぎた権力志向

                       2015年3月25日

 

 理化学研の野依良治理事長(76)が今月末で退任します。任期途中の辞任ですから、世界を騒がせたSTAP細胞研究をめぐる不祥事の責任をとったのだろうと思うのが自然です。それがそういう形をとらなかったのですね。後味が悪い退任となりました。

 

 理化学の女性研究者による論文の不正、事実関係の捏造は、日本科学史で最大級の汚点となりました。「心からわびる」と言いながら、その責任について野依氏は記者会見で「第一義的には(研究に携わった)研究者の責任が最大だ」と語りました。理事長として説明責任を十分、果たしていないという指摘には「適宜、説明してきた」と反論しました。

 

 この不祥事には、研究者個人の不正にとどまらず、研究現場の相互チェックの緩さ、はやった功名心、不正が浮上してからの疑惑解明の遅さ、さらには科学界全体に浸透している論文捏造体質など、根深い構造的問題があります。それこそノーベル賞受賞者である野依氏が先頭にたって改革に取り組むべきなのです。

 

  自己防衛本能の強い人

 

 私の友人の大学教授が「権力志向の極めて強い人、自己防衛本能の強い人だ」とメールを送ってきました。10年ほど前、この教授が何か批判めいたことを書いたら「おれはそんなことを言っておらん」と、すごい剣幕で電話越しに怒鳴られたそうです。科技庁に調べてもらったら、審議会の発言要旨に教授が触れた通りの部分が載っていたそうです。

 

 「野依理事長、辞任へ」という特ダネらしき新聞記事を読み直しますと、「理事長として在任が長くなり、高齢となった」、「論文不正問題が一段落し、特定国立研究開発法人(予算が優遇され、裁量も広がる)の指定を受ける環境が整う」など、辞任理由が書いてあります。もっともらしいようでいて、かなり妙で、こじつけたような理屈ですね。

 

 本人の名誉を傷つけまいとする人事当局の痛々しい配慮がうかがわれます。この種の辞任の記事としては、珍しい書き方です。「決して引責辞任ではないのだぞ」という本人の意向もあったと、十分に推測されます。実際は「ここらあたりで局面の転換を」という政治的意図があったのでしょう。

 

 名選手は名監督にあらず

 

 STAP細胞研究の疑惑が動かなくなり、内部調査、外部委員会の調査、女性研究者らの記者会見、直属の上司の自殺など、決定的な節目が何度かありました。野依氏が率先して解明、釈明に乗り出すだろうと想像した人はおおいでしょう。期待は裏切られました。

 

 「名選手は名監督にあらず」の通り、野依氏の頭脳は世界で一流であっても、組織管理能力とは距離がありました。これは野依氏の責任ではありません。理化学研の広告塔に担ぎ上げよう、知名度も上がる、予算も取れると、考えた人たちの責任です。知名度のあり過ぎる人の辞め方、辞めさせ方はつくづく難しいと思いました。

 



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