新聞も未練がましい論調
2020年7月23日
東京五輪の開催まであと1年となりました。日本の状況だけで決められないし、新型コロナ感染が拡大している国が多く、開催は絶望的でしょう。無理に開催すれば、コロナウイルスの発生源の国でありながら収束状態に入り、選手はトレーニングに励んでいるはずの中国を最も利することになります。
中国の感染収束は、共産党の独裁政権だからできたというより、アジアの人種特有の免疫構造、BCG接種国であることの影響が大きいとの説が注目されています。ベトナムにいたっては死者ゼロで、韓国、台湾も少ない。日本もその一角をしめます。中国もコロナ収束をあまり威張ってはいけない。
つまり感染防止体制が整っていようといまいが、欧米のような悲惨な状況にはならなかったとの説です。第2波、第3波があったとしても、死者数は欧米100分の1程度で、アジアでは第1波と同じような展開になるとの説は興味深い。
通常なら、中国を敵視する米国のトランプ大統領は「コロナのせいで五輪は開催中止を」と、発言しています。その米国は感染者400万人、死者15万人で、世界最大のコロナ危機に見舞われていますから、偉そうな口はきけません。十分な規模の選手団を派遣できるはずもなく、本音は中止でしょう。「中国に五輪で負けるなら中止がよい」と、計算しているに違いありません。
トランプ氏はコロナを楽観視し、経済優先に動き、感染拡大を招いたと批判されています。選手だって満足なトレーニングができず、本番に向けた準備の競技会も開けていないはずです。11月の大統領選も近づき、この段階で「中止」とはいいにくい政治的な背景があります。
日本は、安倍首相が「日本モデルの成功」と、一時は自負しました。「いち早くコロナに収束に成功し、五輪の東京開催にこぎつけられた」という流れにしたかったのでしょう。その後、感染者数を見て「コロナ第二波」と社会は不安になり、「日本モデルの成功」とは、自慢できなくなった。
世論調査をすると、「再延期36%」「中止33%」(共同通信)で7割が「来夏の開催はとても無理だろう」です。安倍政権は「目算が狂った」と、思っているでしょう。森・組織委員会会長は「当初、2年延期を主張したのに、安倍首相がはねつけ、1年延期にした」と内幕を明らかにしています。「さらもう1年の延期は認めない」と、IOCは言い、「また延期に迫られたなら中止」しかない。
その点からも、安倍政権は「中止」の早期決定を政治的に決断しにくい。「2年延期にしておけばよかった」の批判がでるのは必至です。さらに政権周辺は「解散・総選挙」の情報を流し、野党を揺さぶっています。安倍首相が「中止決定」を表明すれば、政治責任を追及され、解散しにくくなる。従って「中止はやむおえない」という状況に追い込まれるのを待っていると想像します。
「五輪は平和の祭典」は表紙の話であり、「政治的駆け引きの祭典」「巨額の資金が動く商業マネーの祭典」でもあります。日本から「中止」を持ちだせば、それに伴う費用をまるまるIOCに押し付けられかねない。だからIOCが主導で「中止」が決まるまで、日本からは態度を鮮明にしない。
今朝の新聞を読むと、日経などは「来日する選手1万人、大会関係者5万人の入国前PCR検査の実施体制を整えるのは容易ではない」「数百万人の観戦、観光客に対する検査ができるか不透明」「会場の消毒はどうするか、感染者がでた場合の濃厚接触者の追跡をどうするか」で、「難問が山積」と。
世界的に見てコロナ感染が確実に収束したといえる状況は、今秋か年内にまず生じない。1年後の開催は絶望的ですから、「中止の早期決断をして、後々慌てないように」と、新聞は迫るべきです。社説でそう明言すればいいのに、五輪のオフィシャル・パートナー(協賛企業として、五輪を広告・宣伝面で使える)だから、明言しない。
毎日は「コロナ下の大会像の提示を」との見出しで、「オンラインの双方向性、バーチャル映像を活用して五輪の価値を伝えられ」と、意味不明の主張をしています。未練がましい論調です。
読売の社説は「感染を防ぎ安全な大会を目指せ」の見出しです。「関係者に入念に準備をしてもらいたい。一定程度に感染を抑止して、五輪開催が可能なるよう、対策を講じることが重要である」と。それが難しい作業だから、「中止論」がでている。そんな主張には虚しさを感じる。
あなたは怖くてしょうがないのでしょうが、世界はもっとお金に関しシビアなので莫大なお金が動くオリンピックを中止する選択肢はありません。そもそも感染者は増加しても、世界全体では重篤者は1%まで下がり、莫大な被害を出したヨーロッパもEU内は移動自由にして観光業を支えています。
あなたは日本でもトップクラスに恵まれた高齢者てすが、そうではない人達から見れば経済のシュリンクは長期に渡る死活問題です。長年高給をもらい特権意識を持った新聞記者という人達はわからないでしょうが。新聞社が倒産することを心から祈っています。