新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

全国紙の元記者・中村仁がジャーナリストの経験を生かしたブログ
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腹が立つ薬剤師・薬局の儲けすぎ

2015年12月03日 | 社会

 

 

門前薬局にメスを

2015年12月3日

 

 月に2程度はどこかの病院、医院に通う私にとって、いつも腹が立つのが、帰りがけに薬を買う調剤薬局、そこにいる薬剤師の皆さんたちです。医師の処方箋に従って棚から薬を集め、いつもと変わりなくても同じ説明書を添付し、袋に詰めて、われわれに渡すだけで、薬代(薬剤料)の2,3割の手数料を請求するのです。

 

 この問題はブログで何度も取り上げました。あきらめかけていましたら、ついに政府が改革に乗り出すというのです。財政再建のために社会保障費を減らすにあたり、来年度の診療報酬の改定で薬剤師、調剤薬局の儲けすぎを是正する予定です。300億円程度、薬剤師の技術料を引き下げる方針だという新聞記事を読みました。医療費が40兆円、そのうち薬剤師技術料は1・8兆円だそうですからわずかな金額です。それでも、これを突破口にしてくれれば、よしとしましょう。

 

厚労大臣が大きな対談広告に登場

 

 よしとできないのは、山本・日本薬剤師会会長と塩崎・厚労相が対談を行い、1面全部をつぶした大きな広告記事が全国各紙に載ったことです。「患者さんのための薬局ビジョンとは」という見出しです。中身は「地域包括ケアシステムと薬剤師」、「かかりつけ薬局の推進」、「患者本位の医薬分業」など、どれも異論があるわけではありません。そうしてほしいという項目が並べられており、きれいごとに終わらせず、本気で改革してほしいと願うばかりです。

 

 おかしいと思うのは、厚労相がばかでかい広告記事の対談相手に登場したことです。薬務行政は厚労省の管轄であるにせよ、薬剤師、薬局の本気度を国民の多くが疑っているいるときに、2人はにこやかに対談に臨み、思い切った改革が進むという印象を与えようとしています。改革するから手荒な技術料の削減などをしないでくれというのが業界の真意でしょう。厚労相はその演出を手伝わされているように見えますね。広告代は全国各紙を合わせると1億円は超えるでしょう。

 

白衣を着て飛び回わるか薬剤師

 

 厚労相は「処方箋を受け付ける際に、疑問点を医師に確認するとともに、薬の専門家としての立場から監査するなどして、地域の医療体制を支えようになる」と発言しています。薬剤師がその程度のことをなぜこれまでやろうとしてこなかったか、医師との力関係を変え、発言力を持てるのかが問題なのですね。薬剤師会会長は、「現在の薬局をかかりつけ薬局(患者に対する一元的・継続的な把握)に再編する。薬剤師は薬局で患者を待つという姿から、白衣を着て地域を飛び回る姿に変身する」といいます。そうなれば素晴らしいことです。

 

 そのために何が必要なのか。薬剤師は恵まれた職業で、病院・医院の休業日(日祝祭日、定休日)に合わせて閉店し、営業時間も夕方までと短いのです。拘束される時間が普通の店に比べてずっと短いのですから、これまででも「白衣を着て地域を飛び回る」ことはできたはずです。また、1人ひとりの服薬情報を一元管理するには、あちこちにまたがる薬局で求めた薬の名寄せ(集中管理)が不可欠です。手作業で簡単に実現できるとは思えません。

 

競争原理が働かない

 

 私が毎月、通う循環器内科(個人医院)は8月に新しい医院を建て、引越しました。すぐそばあった薬局も一緒に移転し、なんとその医院の2階に入りました。いわば専属薬局みたいな感じです。薬剤師、会計係がいつも4人ほどおります。営業時間は短く、人件費はかさむのに経営がよく成り立っていますね。競争原理が働いていないのでしょう。

 

 手許にある薬局の領収証(1月分、5種類)をみますと、「薬剤料950点、調剤技術料290点、薬学管理料40点(1点10円)」と書かれています。薬剤料は政府が決める薬価で、製薬メーカーへの支払いです。その他の項目は薬局、薬剤師の収入になります。薬代に対して3割程度がかれらの収入ですね。それに見合う仕事をしてくれているのならともかく、「その後、お変わりありませんか」、「お薬手帳はお持ちですか」と、簡単なことを聞くだけです。

 

 日本人の平均寿命が世界でトップクラスなのは、医療・検査技術の発展、効果の大きい医薬品の普及、レベルの高い病院・医師のおかげです。そのことには感謝しなければなりません。どうにも理解できないのは、薬剤師・薬局の役割です。薬剤師会の政治献金は医師会を上回ると聞きました。その圧力もあり、これまで聖域扱いだったのでしょうか。改革を望みます。

 

 

 



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1 コメント

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正当な対価 (原村)
2015-12-27 23:18:46
こんばんは。
述べられている論旨については基本的に賛成です。
誰が見ても労働(知能労働も含み)した行為に対して適正な対価であれば不満は無いとおもいます。
誰の目から見てもその労働対価が適正でない事が問題だと思います。
と言う事は、国が国民の声を聴かずに政治団体の圧力でその労働対価を決めていることが問題なのです。
共産国家より、より一層社会主義国家の如くの制度が問題だと思います。
適正な対価に変更すべきだと強く私もおもいます。
そもそも薬学部が6年制の必要があったのでしょうか。
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