無視されても日本は主張すべき
2015年12月5日
イスラム国テロに対する国際包囲網を敷こうとしている時、その中心的な国である米国で、自国民による、自国民に向けた銃の乱射という惨劇が起きました。銃の購入、所有が事実上、野放しなっているのです。「こんどこそ銃規制の実現を」の声が高まるでしょう。高まってもいつものように、うやむやにされるのか、今度はそうはいっておれない、となるのでしょうか。
そこで日本の出番です。世界で最も厳しい銃規制(猟銃以外は禁止)の歴史を持つ日本だからこそ、銃器の禁止・規制を提唱すべきでしょう。たとえ各国から「現実的ではない」などと無視されても、国際的に一石を投じるべきではないでしょうか。日本同様に厳しい規制の英国などと協力したらどうでしょうか。
テロの背景には、銃器に対する規制がなかったり、抜け穴だらけだったり、密輸入が行われていたり、という問題があります。これでは、ましてイスラム・テロを壊滅することなどできません。安保法制を転換した安倍政権のイメージにとっても、意味があるかもしれません。どうですか、安倍さん。
好対照の経済的自由、政治的不自由
元経産官僚(通商審議官)だった畠山氏が最近、「経済統合の新世紀」という著書を出版しました。通商、貿易の自由化の流れを扱い、TPP(環太平洋経済連携協定)の合意にこぎつけた経緯を評価しています。経済的には、世界は自由・無差別(障壁、差別の除去)が急速に進んでいるのに、政治、外交、安全保障面では、経済とは反対の方向に向っているという感想を私は抱きます。
イスラム国のテロ、ロシアのクリミヤ併合、中国の海洋進出などにみられるように、経済的自由と政治的不自由(対立)の対照的な動きが特に最近、顕著ですね。畠山氏は巻末に書いた感想のひとつとして「銃規制の国際条約構想を」と、述べています。「そんなことができるわけはない」というのが多くの見方でしょう。できるわけはないと、あきらめていてはいけません。イスラム国を安心させるだけです。銃ばかりでなく、半自動小銃、ライフルなどを含みます。
畠山氏の構想をかいつまんでいうと、こうなります。「すでに所有されている銃は登録制とする」(既所有者は当局に届け出なければならない)、「新規の所有者は許可制とする」(当局の許可なしに所有できない)、「輸出入は要許可制とする」(密輸を取り締まる)、「各国との間で国際条約を締結する」などです。このあたりから始めて、必要最小限の銃器しか認めないように、追い込んでいくという考えでしょうか。
使わない兵器ばかり禁止の矛盾
「使わない、使えない大量破壊兵器(核、大量殺傷兵器など)は厳重に規制し、国際協定もある」、「使える通常兵器については一般的な禁止条項はない。あるのは国境を越える移動の国連への任意登録だけ」と、畠山氏は指摘します。「使えない兵器は禁止し、使える兵器を野放しにし、それがテロに使用される」というのが現状です。明らかな矛盾です。
カリフォルニア州における惨劇の犯人は大量の銃器、弾薬、パイプ爆弾を所有していたそうです。犯罪歴がなかったので、合法的に購入していたとかいわれています。イスラム過激派に共鳴していたともされ、事実なら米国はイスラム国包囲網どころではなくなります。先ず米国自身の国内対策を、となりますね。オバマ大統領も立場がなくなりました。
護身用のつもりが命取りに
「イスラム国テロが米国内で内発」したとなると、「だからこそとにかく銃規制を」となるのか、「イスラム国テロから身を守るための護身用の銃はやはり必要」となるのか。これからまた、大議論になり、次期大統領選に向うことになります。議論ばかりが続くならば、米国はテロへの代償の支払いを覚悟しなければなりません。
国際情勢をみると、シリアの反政府勢力を支援するため、米国は兵器を供与している。イスラム国はイラク軍から高性能の米国製武器を奪っている。こうなると、米国内における銃規制だけを強化しても、何の解決にもならない。一方、イスラム国は空爆だけでは、壊滅できない。地上軍の大規模な派遣は、欧米で国民の支持は得られまい。そういうのが有力な見方です。欧米は堂々めぐりの迷路に入り込みました。せめてもの銃規制が一歩も進まないようなら、テロに高い代償を払い続けることは承知の上、を意味しますね。
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