勝敗ラインも不明
2014年11月15日
安倍政権が「消費増税の先送り」を最大の争点にしようとしている解散・総選挙をめぐり、不思議なことにその争点が消えかかっています。民主党が急に増税先送りに転換し、主だった政党の多くが先送りで勢ぞろいしてしまったからです。選挙に勝っても負けても、国会では先送り法案が可決されることなるわけです。どのような勝敗ラインの議席数を安倍政権が示すのかも不明で、本当に「何のための解散」になってしまうことなりかねません。
勝敗ラインから考えましょう。与党が「消費増税の先送り」を決めても、そのためには消費税法をこれから改正しなければなりませんから、解散して有権者に信を問う意味は形式的にはありえます。その場合、何議席以上が与党の勝ち、何議席以下が負けかを選挙前に明らかにしなければ無責任です。勝ちなら増税の先送り、負けなら15年10月の増税実施となりますね。負けたら、つまり有権者は増税に反対(世論調査では7割が反対)しているのに、与党は一転して、増税実施にまわるのでしょうか。まさか・・・。
与党は議席を減らすか
その勝敗ラインは、現状に比べての増減か、絶対安定多数の維持か、安定多数の確保か、あるいは過半数の確保などのどれかが基準になりましょう。現在は衆院で自民が294議席、公明が31議席で絶対安定多数の状態です。自民党勢力は恐らく現在がピークで、今回の選挙では野党は議席をある程度以上は回復させるでしょう。
安倍政権は、自分で世論調査や選挙区の情勢を分析し、どの程度の議席を確保できるかを見積もり、勝敗ラインを示唆するでしょう。いくらなんでも過半数を割ることはないでしょう。現状から議席を減らしても、絶対安定多数を維持すればまず信任、それを割ると不信任と考えるのか、今は分りません。現在がピークとすれば、まず議席を減らすことになりそうですから、政権にとってはリスクのある解散です。
次に、最大の争点で、与野党の対立は消えてしまいました。与党も、主だった野党も増税先送りなのですから、増税を先送りにすることは選挙の争点ではなくなってしまいました。なんのために選挙やるのでしょうか。政権側は軽減税率(生活必需品の税率を低くする)の導入を示唆しています。野党も軽減税率に賛成ですから、これも争点になりません。有権者は何を基準に投票していいのか迷うことになります。困りましたね。
何を基準に投票するのか
景気が悪化していれば、増税を取りやめるという景気弾力条項(消費税法)を削除し、17年4月の引き上げは何が何でも実施するという決意を表明するという案も、政権側にはあるようです。どうなんでしょうか。弾力条項を削除したところで、国会が改めて消費増税の先送り法案を作り、成立させれば、先送りできます。この条項は気休めみたいなもので、実質的な争点にはなりえません。
報道によると、アベノミクスの効果で税収が増えており、増税を先送りしても、赤字国債をその分、発行しなくても済むという見通しがあるとのことです。景気対策で税収が増えれば、その分、国債発行額を減らしていくのが本筋です。税収が順調だから、増税を先送りするという論理は変ですね。懸命に働き、増えた収入で借金(国債)を減らすべきなのに、それを飲み食いに充てしまうようなものです。すくなくとも増税を見送るなら、景気対策の補正予算は組んでいけません。
まとまりのなかった野党は、いいチャンスがきたとばかり、野党の一本化の動きが浮上してきました。大阪の橋下市長も国政選挙にでるような構えを見せています。どうやら寝た子を起してしまったようなところがあります。
消費税が争点から消えると、野党は安保法制、原発再稼動、政治資金の不正流用などを争点に仕掛けてくるかもしれません。これらは与党がもっとも嫌がる問題です。安倍政権は本当に熟慮して解散を仕掛けているのでしょうか。論理的にきちんと説明するのが難しい道に迷い込んでしまったのではないでしょうか。
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