新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

全国紙の元記者・中村仁がジャーナリストの経験を生かしたブログ
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トランプ勝利は大手新聞と世論調査の敗戦

2016年11月10日 | メディア論

 

予想困難な非連続の時代

2016年11月10日

 米大統領選に勝ったトランプ氏に敗北したのはヒラリー氏ばかりでなく、ヒラリーを支持した米大手新聞であり、結果を完璧に見誤った世論調査です。当初は泡沫候補扱いされたトランプ氏が勝ち、米国政治の王道を歩いてきたヒラリー氏が負けるとは、多くの日本人も考えなかったでしょう。


 EU(欧州連合)からの離脱か残留かをめぐる英国の国民投票(6月)でも、世論調査は国民の意思の把握で間違えました。新聞、テレビの大手メディアは、世論調査で時代の流れを測定しながら、自らの主張、紙面のあり方を考えます。大手新聞とテレビという既存のメガメディアは、国民全体がかかわる国家的なテーマでの敗北が目立ちます。


 恐らく過去からの流れの延長戦では、世論や民意を測定できない「非連続の時代」、あるいは「不連続の時代」に入ったのでしょう。既存メディアはどうしたらよいのか。ネット上に流れる無限に近い情報・メガデータをつかみ、分析・解析し、伝統的な手法を補強することが不可欠になると思います。


民意を追いきれない世論調査


 米国における有力紙などによる世論調査は、圧倒的にヒラリー氏の当選を予想しました。「世論がそう予想しているということにすぎない」ではすみません。世論が違うことを予想しているのに、つかみ損ねたとなれば、メディア側の敗北です。なぜ民意をつかみそこなったのかが問題です。原因は様々でしょう。


 社会の流れの変化が加速しています。世論調査のデータをみて、有権者が投票態度を修正する頻度が増していると思われる。投票日という最後の瞬間の予想をつかみ損なう。つまり投票行動を追いきれない。ニューヨーク・タイムズ紙は投票締め切り直前の段階で「84%の確率でヒラリー氏」と速報し、何時間後かに「トランプ氏」と修正した。


 過激、誤った認識、無知が多いトランプ氏の言動をテレビや新聞が流すと、面白がられ、視聴率を稼げる。トランプ人気をメディアの報道自身が底上げしている。この場合も最後の瞬間動きがつかめない。トランプ人気に報道自体が加担していることに対するメディア側の反省は聞かれない。


伝統メディアとネットメディアの相互補完を


 技術的な問題も多い。「固定電話への調査が主体で、携帯電話の所有者まで手が回らなかった」、「固定電話と携帯電話とでは、所有者属性が異なる」という原因はある。さらに、「地域、人種、所得で民意の違いが大きくなり、それを正確に把握するには、サンプル数をもっと増やす必要がある。回答率も低い。改善するには費用も時間もかかる」などの問題点も。


 伝統メディアの新聞記事、社説、解説などが多くの読者に読まれていれば、民意に反映されたでしょう。ネット中心のライフスタイルをとる世代、所得層が増えています。私がよく行くスマホ・ショップで、新製品を購入した際、「試しに社説を見てみたい」と頼むと、「社説ってなんのことですか」と若い店員さんに逆に聞かれ、「えっ」と絶句しました。


 米大學の調べでは、新聞が社説で「クリントン支持」と表明したのはニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなど57紙でした。「トランプ支持」はわずか2紙だったそうです。主義、主張としては「クリントン支持」が正しいと思います。それなら有権者に大きな影響を与えたかなると、そうはなりませんでした。トランプ氏は有力紙にも勝ったわけで、メディアは自らの敗北の意味をどう考えるか、ですね。


 





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2 コメント

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Unknown (アバカブ)
2016-11-11 00:28:05
そもそも、大衆の流れを意識して阿るかどうかでしょうね。ひたすら阿るなら、もう新聞ではないと思いますが。コラムなんてある意味なくなるし。大衆に情報を与え啓蒙するのが、もともとの新聞の意義でしょう。それを忘れたら終わりです。ネットで情報取れる? 精査する役目こそ、新聞と識者の仕事でしょう。変に迎合する必要はないんです。毅然と批判精神を保つことこそが新聞の仕事でしょう。
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トキディデスの罠 (案山子)
2016-11-11 23:36:56
グローバル社会と言う魔物が、世界中を席巻している。金と権力を餌として、ウオール街を伏魔殿として、メディアと言う兵隊をつかつて、特権階級のユートピアを建設している。贅を尽くした金ぴかの街、その外には僅かの中流階級の街が並び、またその外には有象無象の底流階級が増殖している。そのさなかアメリカで大統領選挙が行われた。守銭奴と言われている。クリントンはグローバル社会の守護者として、メディアから祭り上げられ、歪曲した世論調査をして分析した結果、クリントンの当選間違いなしと報道された。私は分析したのではなく【願望】がそう言う結果を導いたと思う。彼らは高学歴のエリートが、世界をリードしなくてはいけないと思い上がっているらしい。グローバル社会の構成員であり、特権階級一端を担っているメディアの構成員にとつては、グローバル社会の後退は自分達の富を放棄することに繋がり、トランプの台頭を容認することはできず、クリントンの主義・主張は正しいと決めつけ、暴言王トランプを面白いから、視聴率が稼げるからではなく、こんな指導者がアメリカの大統領になったら、それこそアメリカの恥であると、トランプに傾いた潮流引き戻そうとの画策が背景にあるのだろう。
しかし、潮流を変えるには、中国共産党のように、言論・人権弾圧意外不可能でしょう。歴史を振り返れば、日本帝国主義の日露戦争前後が日本の分岐点だったかもしれない、メディアが国民を扇動し、提灯行列・日比谷騒動事件が起こり、軍の指導者が言論・人権弾圧を始める。そして聖戦と言う大義のない戦争に突入していく。
それにしてもアメリカを担うことになったトランプは、中東・中国包囲網を築くことになるのだろうけど、内外多難なことに彼の手腕がためされるのだろうが、大変な時期に大統領になったもんだ・・・


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