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「格差社会」が野党再編の対抗軸になる

2014年12月17日 | 政治

  新しい社会モデルを作れ

                      2014年12月17日

 

 安倍政権の圧勝に終わった選挙後の世論調査をみると、「自民党の獲得議席は少ないほうがよかった」(55%)、「圧勝は、他の党よりましだと思われたため」(65%)、「民主党はもっと多いほうがよかった」(45%)、「自民党に対抗できる野党が必要だ」(82%)などで、どの調査も似たような傾向を示しています。有権者はバランスのとれた健全な判断をしています。中でも「自民党に対抗できる野党」を望む声が圧倒的で、日本の将来のためには対抗軸が必要です。

 

 新聞の社説などは「民主党の代表選は、再建派の岡田氏、再編派の前原、細野氏らをめぐり展開される。一強の自民党にいかに対峙するか」などと書いています。常識的なところでしょう。わたしは、だれが代表になるかに関心を寄せるよりも、どのような政治、経済、社会思想を持って、対抗軸を作るかのほうがはるかに重大だと思います。

 

   再編野党の出番はくる

 

 安倍圧勝政権の期間がしばらく続き、野党がどうあがいても、なかなか対抗できないことでしょう。その間、再編路線を共有できる野党が準備にはいり、対抗軸をじっくり構想していくことです。安倍政権の弱点はあり、それが必ず顕在化します。特に、毎年40兆円もの国債を発行していかなければならず、「財政再建」は言葉だけが上滑りし、その一方で異常な規模の金融緩和が長期化する経済政策は国際金融市場の波乱に揺さぶられる時が、そう遠くない将来にやってくるに違いないと、わたしは予測します。その時が再編野党のチャンスで、きちんとした対抗軸を用意していれば、出番がくるかもしれません。

 

 では、何が対抗軸になりうるのでしょうか。それは「格差社会」だと思います。日本は少なくとも3つの格差に直面しています。「所得格差」、「地域格差」、「世代間格差」です。自公政権もこれらの格差是正に取り組み、選挙公約でも万遍なく具体的な政策をならべています。民間に対する賃上げ要請、孫や子に対する無税贈与の拡充、地方創生、既得権を排除するという規制改革なども格差の是正につながるでしょう。

 

 実際はどうなのでしょうか。アベノミクスの主導原理は格差も是正するといいながら、実際は格差の拡大がひそかな前提になっている構想のような気がします。というよりも、低迷する世界経済を生き抜いていくには、格差の存在を黙認していくしかないという政治、経済思想がアベノミクスに組み込まれていると思います。本音でそのことを口にしていないだけのことです。そういう選択しかないのか、別の選択肢があるのかどうかが大問題なのです。

 

   アベノミクスの本音は何か

 

 安倍政権が円安問題を重大視していないのは、中小企業、消費者よりも大企業を中心とする輸出企業を優先せざるを得ないということなのでしょう。「2%インフレ」の目標は、実質的には「2%のインフレ税」にあたり、1000兆円もの国家債務を毎年20兆円相当も削減する効果があります。増税は簡単に国会を通りませんから、財政危機を救うにはこうした手しかないのかもしれません。別の道を選ぼうという考え方はあるかもしれません。それを対抗軸として野党が考え、提示していけばよいのです。

 

 3つの格差に続く次の問題は、テロです。パキスタンでタリバンが学校を襲撃し、無差別銃撃をしました。豪州でも「イスラム国」に共鳴したテロリストの破壊活動がありました。その背景には、世界規模の格差拡大もあるでしょう。政治的動機を背景にした軍事的テロばかりが現代のテロではありません。自然界の暴走というべき集中豪雨、豪雪も人間社会に対する報復活動です。CO2を際限なく放出し、気候変動を自ら招き、われわれの生命自体が脅かされています。これも言葉を変えれば、自らが呼び込んだテロでしょう。

 

 もうひとつ、人間みずからが招いているテロがマネー・テロです。金融危機がきた、デフレの危機がきたといっては、世界各国は過剰なマネーを市場に放出してきました。それがバブルを生成し、いつかは崩壊する、あるいは弱体化した国を投機筋が狙撃するということが繰り返される時代に入りました。ロシアのルーブルの暴落はその一例です。

 

   恐ろしいマネー・テロ

 

 原油下落で米国のシェールオイルの開発企業の業績が悪化し、社債や借り入れの返済が困難になり始めるかもしれません。その中で、リーマンショックを招いたサブプライム・ローン問題(不良な住宅ローンの証券化の破綻)、ひいてはリーマンショックが再現するというシナリオもささやかれています。その背景に、行き場を失った過大なマネーが危険な地雷原にしばしば踏み込み、暴走するという問題がありますね。金融危機は外部からくるのではなく、自ら招いているのです。

 

 「3つの格差」や「3つのテロ」は、どうしようもなく、その道に踏みこまざるを得ないように追い込まれてしまったという面も、あるにはあります。そこから抜け出すにはどうしたらよいのか。ようするに人間社会の選択の問題です。別の選択はないものなのか。そのことを考えるべき時がくるに違いないと思いますね。

                     



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