新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

全国紙の元記者・中村仁がジャーナリストの経験を生かしたブログ
政治、経済、社会問題、メディア論などのニュースをえぐる

朝日新聞叩きのヒステリー

2014年09月18日 | 社会

  メディアの自殺

                    2014年9月18日

 

 朝日新聞に対する激しい批判がとどまるところを知りません。従軍慰安婦、福島第一原発をめぐる誤報、というより捏造報道問題で、記事の取り消し、謝罪、社長の辞意示唆で、朝日新聞は区切りをつけるつもりだったのでしょう。そうはいきませんでした。対外的にどう説明するか、国連の委員会に説明するのか、国会との関係をどうするかなど、山はまだいくつもあります。

 

 わたしが懸念するのは、朝日叩きのつもりが、結果として、メディア全体の信頼性、イメージを傷つけ、自殺行為になっているのではないかという点です。朝日叩きは、新聞、月刊誌、週刊誌で沸騰し、いっそのこと、朝日を廃刊に追い込もうとしているかのような意気込みです。朝日に対する集中砲火を見ている人たちが、メディア間の近親憎悪の激しさに失望し、それが活字離れ、新聞離れを加速しかねないのではないでしょうか。

 

 誤解のないように申しあげておきますと、わたしは朝日新聞の壮大な誤報、捏造報道は、朝日にとってはもちろん、メディアにとっても、日本にとっても、許し難い事件だと思っています。単なる一過性の誤報、捏造問題ではありません。朝日が新聞としての存在をかけている反権力、反政府、反国家の精神が生み出した構造的問題です。慰安婦の強制連行という虚構を通じて日本軍、日本政府を徹底的に追及しようとしたのです。原発から「命令に背き、撤退」という、これも虚構を通じて、原発の恐ろしさを増幅しようとしたのです。それこそ解体的出直しが朝日に必要でしょう。

 

 本題にもどります。まず、ジャーナリストの池上彰さんへの不満です。池上さんは朝日の検証報道を批判する記事を寄稿したところ拒否され、それがニュースとして流れ大騒ぎになり、朝日追及の急先鋒のような人物に扱われ、一躍、株をあげました。その後の談話で「慰安婦報道で謝罪すべきだというわたしの指摘を朝日がのんだことを評価する」というようなことをいっています。

 

 ちょっと図に乗ってはいませんか。池上さんの「訂正が遅きに失した。訂正するなら謝罪もすべきだ」などは、他の人たち、メディがすでに指摘しています。 自分が朝日と対決したため、朝日が折れてきたと思っているなら自信過剰もいいところです。池上さんは自分の株を上げたり、下げたり、もっと謙虚になってほしいですね。

 

 次は新聞業界です。創業以来の危機をみずから招いた朝日をこの際、痛めつけようとの意図がありありですね。活字離れ、新聞離れが死活問題になっている業界にとって、朝日問題はそれこそ千載一遇のチャンス到来なのでしょう。朝日と社論で対立してきた読売、産経新聞は紙面でも、販売面でも、いきり立っているようですね。

 

 朝日の社論、編集方針の全面否定ならともかく、営業面(販売面)で朝日に攻勢をかける道具に使おうおうとするなら、「新聞界はそんなところか」という失望を買うことでしょう。すでに多くの読者が「やりすぎではないか」と、感じているようですね。

 

 さらに週刊誌、月刊誌の朝日攻撃は、活字媒体間の近親憎悪がいかに激しいかを見せてくれています。毎号、ヒステリーのような大特集を組み、9月25日号では「うわべだけの謝罪を喝破する」、「謝罪会見で見せた謝らない体質」(週刊新潮)、「木村社長に辞任勧告スクープ」、「足を引っ張りあう社会部対特報部」(週刊文春)などです。

 

 朝日は総懺悔しています。なにを書いても、反撃してこられないとみてとって、どんな材料でも朝日悪者説に結びつける品のなさですね。まともな読者は辟易して、「週刊誌というのは、そんなレベルなのだ」と、思い込ませることに役立っていますね。

 

 10月は新聞週間が設けられてもうけられている月で、新聞大会(全国の加盟社による新聞業界の祭典)も開かれます。記念講演はドナルド・キーンさんの「文字離れと未来ー新聞の役割」です、座談会は「新聞界が直面する諸課題」です。朝日事件は皮肉なめぐり合わせとなりました。

 

 昨年の新聞大会の決議には、新聞の役割として「民主主義を基盤としての権力監視、的確な論評と解説、公正な歴史の記録者」などが指摘されています。これにまったく反する事態を招いています。特に朝日は、他紙も朝日事件を教訓に、「公正な歴史の記録者」とは何かをあらためて、想い起し、メディアとしても信頼回復に務めなければなりません。

 



最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
古い記事を読み返してると (通りすがりの薬剤師)
2017-11-06 01:10:13
ふむ、
やはりあなた方は同業者は擁護するんですね
この記事は神戸製鋼の偽装や
東芝の粉飾決算と同レベルの大問題と思いますよ?
それについて
朝日自身も自分らへの糾弾をしないばかりか
他社までそのようなことをしているのであれば
報道の公平性っていうのがないですね
薬局とかも散々批判するのにその程度ですか?ってホンマに思います
本来資格っていうのは責任を取るためにあるものです
薬剤師であれ、医師であれ、ナースであれ
何かしらの問題があれば最悪は免許停止や剥奪といった行政処分を受けます
ですが、ジャーナリストっていう方々については国家資格がありませんので
何を書こうが、名誉毀損で訴えられることはあるかもしれませんが
基本的には業務停止を含めた処分が個人に下されることはありませんね
だから好き勝手なことを平気でできるんだと思います
個人的にはジャーナリストについては国家資格を導入して
品位のなさや報道の義務的部分が逸脱してる記者については
行政処分や個別指導を受けるようにしていただきたいです
それくらい日本の記者の質は低すぎて見る価値がありません
活字離れを招いたのはあなた方元記者を含めた記者連中ですよ?
ダメディア、マズゴミ、マスゴミです
いい加減偏重報道や妄想記事はやめませんか?
報道の自由を乱用するのやめませんか?
自由に責任を持たないのは無法者って言うんですよ?
返信する

コメントを投稿