新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

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NHK人事 任命した側に責任

2014年02月19日 | 政治

  安倍さん、しっかりして

                    2014年2月19日

 

 NHKの会長、経営委員たちの常識はずれの発言がまだ尾をひいています。今朝の朝日新聞には、2月12日の経営委員会での籾井新会長の発言がまた、物議をかもしたという記事がのっています。経営委員の発言も関係国を怒らせています。これらは失言というものではなく、本音でしょう。本音にしてもまともな人の考え方とは思えないところが問題です。なぜこのような人たちを重要なポストに据えたのか、人選した側に主たる責任があるように見受けられます。

 

 結論から申し上げると、特に会長職には、NHK生え抜きの人がなるべきです。構造改革、組織改革のために、経済界の出身者がこれで3代、続けて会長になりました。まともな経済人は会長就任を打診されても今や断ります。わたしは今回あたりから生え抜きをと、期待しておりました。それが実らず、案の定の事態を招きました。ジャーナリズムも経営もわかる人材をNHKは育てていかなければなりません。経営委員は外部からの登用ですね。ジャーナリズムの立場をわきまえられる人を起用しなければなりません。政権寄りの報道機関にと思う気持ちが強すぎると今回のような失態がおきます。残念なことですね。 

 

 今回の会長人事には、何人かの経済人が候補にのぼっていたそうです。NHKの会長職は以前はステイタスが高く、任命されることは名誉であった時期がつづいていました。それはもう昔の話で、今では候補にのぼっても皆さん、逃げ回るという話です。受信料の問題で国会の委員会に呼び出され、厳しい追及を受けます。NHKの報道姿勢もいろいろ絡んできて、左寄りの勢力からも右寄りの勢力からも突っ込まれます。これにメディが割り込んで、あれこれ書きたてられます。報酬も大企業にいた当時と比べると、激減しますので、よほど奇特な人か、周りから「是非」と口説かれたひとでないと、引き受け手がいなくなりました。

 

 朝日新聞によると、新会長の就任会見で従軍慰安婦、特定秘密保護法をめぐる発言が問題になったことについて、経営委員会で「取り消しているし、どこが悪いのか。素直に読めば理解できるはずだ」との趣旨のことを語り、「反省していない」との声が内部であがっているとのことです。会議がもめそうになったので、浜田委員長が憮然として「終わります」と委員会を打ち切ったとか。個人としてどう思おうと、公共放送のトップとして、いっていいことと、いわないですますことの区別がついていないことが問題にされたのに、学習効果がなかったようです。

 

 本人は率直で、ざっくばらんな人なのでしょう。NHKの関係者からわたしが個人的に聞いた話では、会長就任前に、事務局が資料を用意して、NHKの直面する課題を説明しようとしたところ、真剣に勉強する気を見せなかったとか。大手商社を退職後、社長に就任した企業でも、評判が決してよくなかったという話も聞きました。ジャーナリズムの頂点のひとつであるNHKのトップにそもそもふさわしくなかった人なのかもしれません。そうなると、本人をあれこれ責めるのは酷で、そういう人選をした任命者側に責任があります。

 

 次が経営委員の人気の小説家、百田尚樹氏が都知事選で、歴史観や国家観が近いという右寄りの田母神候補の応援演説をした問題です。米軍による原爆投下や東京大空襲を「悲惨な大虐殺だった。東京裁判は大虐殺をごまかすための裁判だった」と訴えました。びっくりしたのは米政府で「不合理な示唆だ。地域の緊張を高めるようなコメントを避けることを望む」と、反論しました。国粋主義的な漫画にでもてきそうな筋書きですね。

 

 日本軍創設を主張したり、南京大虐殺を否定したり、つまりそういう人物です。2012年に安倍氏と対談し、もう1度、首相をめざすよう励ましたといいますから、安倍首相はこの人物をよく知っているのでしょう。それが経営委員就任の契機になったのかもしれません。経営委員は個人としての言論、表現の自由は制限されていません。そうはいっても、都知事選の応援演説で極端な発言をすれば、どのような反響を巻き起こすか、知っておくべきでしょう。

 

 同じように驚かされたのが、おなじく経営委員の長谷川三千子氏(政治評論家、埼玉大名誉教授)です。20年前に朝日新聞社に抗議に出向き、確か社長室がどこかの社内の部屋で、拳銃自殺した右翼団体幹部を礼賛する追悼文を昨年10月に書き、追悼集会で配ったそうです。「(自殺した)野村秋介は神にその死をささげた」、「野村氏の行為によって、今上陛下はふたたび現御神(あきつみかみ)になられた」などとしるしています。1984年には中央公論に「男女機会平等法は文化の生態系を破壊する」などと執筆したとの記録もあります。

 

 いまどき、そんな思想、信条を持つひともいるのだ、と不思議に思うほどです。この場合も経営委員には、個人的な表現、言論の自由があります。この人は「安倍首相(再任のこと)を求める民間人有志の会」の一人です。安倍首相がこの2人を含む人物たちに親近感を持っていると思われることは、決して首相のプラスにはならないはずです。経営委員を任命する側の考え方に問題があるのだと考えます。

 

 総理補佐官の衛藤参議院議員が、首相の靖国神社参拝に対して、米政府が「失望した」と表明したことを批判し、「失望したのはわれわれだ」と動画サイトに投稿し、後に取り消しました。この人も親安倍派で、首相との絆が強いとされています。米国からラッセル国務次官補が近く来日し、日韓関係の改善の調整をすることになりましたね。米国の力が落ちているからこそ、すくなくとも日韓が友好関係を維持しなければなりません。つまらないところで、日本はつまずいているような気がします。細部においてこそ真実、本質が見えてくることが多いのです。安倍さん、しっかりしてくださいよ。

 

 

 

 

 

 



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1 コメント

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いきなりの質問すいません (ゆうき)
2014-02-20 12:56:01
はじめまして。
ブログの記事読まさせていただきました。
いきなりのコメントで申し訳ないのですが質問させていただいてよろしいでしょうか。

僕は高卒2年目の夢も目標もないフリーターなのですが、スポーツ新聞が好きで漠然とスポーツ新聞記者になりたいと思っています。
ですが、マスコミへの就職は厳しいと聞いていますし高卒の僕はほぼ間違いなくなれないと思っています。
そこで貯めていたお金を使って大学に進もうと思っているのですが、書き物を学べる専門学校も良いかと悩んでいます。
やはり四大の方が良いですかね?
それとどのくらいの大学に入っていれば学歴フィルターにかからずにすみますか?
場違いな質問で申し訳ありませんが答えていただけたら嬉しいです。
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