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小泉進次郎を首相に推す世論の軽さ

2019年09月15日 | メディア論

 

人気と政策能力は別物

2019年9月15日

 安倍政権の改造内閣で小泉進次郎氏(38)が環境相に抜擢されました。組閣後の世論調査(日経)で「次の首相にふさわしいのは誰」と聞くと、小泉氏が20%でトップ、安倍首相が16%で2位でした。8月末の調査では29%、安倍氏が18%でしたから、人気では断然、他を引き離しています。


 私は首相候補に関する世論調査が幼稚だと思ってきました。調査するなら、第1問で「首相として政策能力はだれが高いと思うか」、第2問で「首相にだれがふさわしいか」と、聞くべきでしょう。世論調査ではいろいろ前提をおくことは、回答を誘導することになるとして、避けたのでしょう。


 「首相に誰がふさわしいか」とだけ聞くことは、人気投票としての情報価値しかありません。有権者は政策能力の高さを比較したうえで、回答しなければなりません。人気投票のような調査は要注意です。政治記者(新聞、テレビ)に同じ質問すると、やはり「進次郎」がだいたいトップになる。「世論調査の軽さ」より「政治記者の軽さ」のほうが罪は重い。


間接選挙の国だから安易に回答か


 米国の大統領選挙のように、直接選挙の国なら世論調査の結果が選挙を左右します。ですから政策能力を考えたうえで、「だれが大統領ふさわしいか」を回答するのでしょう。間接選挙の日本では、政策能力抜きの印象だけで回答する人が多い。せめてメディアはそのことを記事に付記すべきです。


 人気が絶大な小泉氏が初めて閣僚に任命されたため、ネット論壇では「首相になったりしても大丈夫か」「小泉氏には国家(外交安全保障、歴史認識、憲法など)が足りない」などの懸念が指摘されています。「国家」が足りないのは、政治家としてのキャリアが不足しているためで、今、心配することではないし、小泉氏が次の首相になることも100%、ないと断言したい。


 かりに安倍政権がスキャンダルか何かで、自民党政権が崩壊するような危機に見舞われれば、人気だけに頼って、小泉氏を首相に立て、国政選挙に臨むことはありえても、それ以外はほとんどない。

 

狭い分野のキャリアしかない


 そうではあっても、将来の首相の芽は多分にある。その場合、小泉氏の弱点は政策能力が未知数であることが問題です。復興政務次官(震災対策)、党農林部会長(農業改革)、党筆頭副幹事長、党厚生労働部会長(社会保障)は経験し、今回の初入閣です。この程度のキャリアから政策能力のレベルを判断できません。


 経済の基本である未経験の財政・金融は、感覚とか饒舌さではこなせない。多難な国際情勢はさらに複雑化するのに、外相もやっていない。それらをこなしてから「首相候補」というのなら分かる。要するにテレビなどで、天性の人気が先行している特異な政治家です。


 政策能力の面で気になったのは、就任記者会見で、原発問題に触れ、あっさり「原発をどう残すかではなく、どうやったらなくせるか」と発言しました。原発は単純な問題ではありません。廃止なら廃止に伴って生じる問題に対する周到な対策、準備が必要です。


 原子力規制委員会は次第に、原子力禁止・廃止委員会といっていいほど、原発に厳しい政策に傾斜しています。地元住民も再稼働に対しては濃淡があっても、新増設は恐らく全面否定でしょう。実際問題として、原発は縮小していく可能性のほうが、復活していく可能性より高い。その場合、再生エネルギーをどう拡充するか、エネルギー価格が上昇していく場合、経済成長率の低下にどう対処するか。


 メディアは小泉発言を深追いしていません。深追いすると、小泉氏の原発廃止論を拡散することになるのを恐れているのか。原発肯定派の読売新聞などは触れないようにしているのか、記事を書いていない。連載「新閣僚に聞く」(読売、9/15)に登場した小泉氏に、「プラスチックごみ、原発汚染土の中間貯蔵施設の搬入」などを語ってもらったものの、肝心の問題に踏み込んでいない。不思議です。

 

 

 

 




 





 


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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2019-09-16 10:09:07
独裁国家の世襲は批判するが、自国の世襲議員はスルーするマスゴミがポピュリズムを増長しています。
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Unknown (ぴぴん)
2019-09-17 13:36:39
小泉氏以上に、今井絵理子に閣僚ではないにせよ破格のポストが与えられたのが気になります。
どう感じられますか?
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