国会は重要な争点からずれていく
2017年3月19日
森友学園の籠池理事長が衆参両院の予算委員会に証人喚問されます。予算委員会といえば、デフレ脱却に向け国家予算を審議する場なのに、森友学園が最大のテーマになってしまっています。捜査権を持った検察、会計検査院あたりがぎりぎり関係者を問い詰め、解明すればいいはずです。10億か20億円程度のことより、97兆円の国家予算のほうがよほど大事です。
証人喚問は、安倍首相側から「100万円の寄付を受けた」という籠池理事長の発言が虚偽ではないかが焦点です。首相側は寄付を否定していますし、かりに寄付をしていても、選挙区外なので違法ではありません。なぜ違法でもない行為の有無に与野党あげて、取り組むのか。そこにどのような意義があるのでしょうか。
首相が国会で「私や妻は学校認可や国有地の払い下げに一切、関わっていない。関わっていたら首相も国会議員も辞める」、「妻も私も寄付金集めに全く関わっていない」と、答弁しました。「首相も議員も辞める」の発言で、理事長との関係の有無、深さが一気に政治的な意味を帯びてしまいました。
違法でないものを俎上に載せる意味
「寄付金集め」が問題になるとしたら、森友学園の小学校開設の資金集めに首相が口利きをし、協力していた場合でしょう。今回の証人喚問の焦点は、首相自身ないし夫人が個人的に寄付をしていたか否かの事実確認です。首相の言う通りならば、もともと違法でないものを俎上に乗せ、籠池発言が虚偽であったか否かを追及する意味は大してありません。
首相が「自分個人として寄付はしていない。また、寄付は違法でもない」と、一言、付け加えておけば、大きな騒ぎにならなかったとも、思います。叩けばホコリが次々でてくる籠池氏のような人物と、不透明な個人的な関係がないことを強調したいために、「関わりがあれば、首相、議員を辞める」とまで、踏み込んで発言してしまったのでしょうか。
森友学園問題の本来の争点は、国有地の払い下げ価格は不当に安かったのか、そこに首相側の影響力が行使されていないかです。さらに行政担当者の打ち合わせの日時、内容に不自然な点はないのか。払い下げた学校用地の地中から大量の廃棄物が工事開始後に見つかったのはなぜか。長い間、廃棄物の処理場として使われていたのではないか。用地の所有者である財務省の近畿財務局、国交省大阪航空局はそのことを知らなかったのか、管理者責任を果たしていたのか。豊中市が買った隣接する用地はきれいな土地だったのか。
全体像の把握、解明こそ重要
疑問を晴らすには、財務、国交省や大阪府の行政担当者を参考人として国会招致し、真相を究明することです。それはどこかに吹っ飛んでしまい、寄付金に関する籠池氏の発言内容を追及する場にすりかわろうとしています。当初、参考人招致に反対していた自民党が証人喚問に切りかえたのは、首相の指示によるのでしょう。
籠池氏を偽証罪で追い詰めれば、首相の信頼は回復できるでしょう。証人喚問で新しい事実がでてこず、首相の名誉が回復できたとしても、本来、違法性のない話なのですから、そこにどのよう意味あるのか。そんなことより、もっと重要な疑問を解明しなければなりません。せっかくの証人喚問ですから、払下げ問題の全体像に向き合ってほしいですね。