民間はスリム化、政府は肥大化
2015年10月8日
安倍改造内閣が発足しました。新聞の一面にでかでかと載っている閣僚名簿を眺めがら、大臣はいったい何人になるのだろうかと、ため息がでました。数えきれないのです。指折り数えたところ20人になりました。選挙のときのハク付けになりますから、特に初入閣の9人は、満面に笑みがあふれています。
首相は「1に経済、2に経済、3に経済」と連呼しました。経済の再生、デフレ脱却は日本の最重要課題です。経済重視に異論ありません。その経済を支える重要な柱は産業、企業です。民間の人たちがどんな思いで閣僚を名簿を見つめたか、首相、閣僚は想像したでしょうか。
民間会社は緊縮、政治会社は放漫
景気、経済の停滞、世界的な大競争のもとで、民間産業は合併・統合、スリム化やコスト・ダウンを迫られ、社長さんたちは顔色がさえません。グループ企業を整理・淘汰し、社長ポストは減っています。政権をグループ会社にたとえると、会長は首相、傘下にグループ会社(財務、経産省などの省庁)がぶら下がり、その社長さんたちがいわば閣僚です。「経済再生を最優先」といいながら、「政治会社」のほうは肥大化しています。
橋本内閣の行政改革で省庁半減(1996年)が断行され、1府12省庁に再編されました。内閣法で閣僚は14人以内とされ、「特別の理由」がある場合は3人まで増やせることになりました。「特別の理由」が次々に加わりました。東日本大震災後の復興庁の新設はともかく、地方創生だの五輪担当だの、担当大臣が生まれました。
「特別の理由」(が次々
極めつけは今回の「1億総活躍」担当相です。何をやるか年末まで案をだすというからあきれます。順序がまるで逆ですよね。必要不可欠の業務があってポストを用意するのではなく、まずポストを作ってから仕事の内容を考えるというのですから。民間企業ではありえません。
そもそもアベノミクスの看板「3本の矢」(異次元金融緩和、財政出動、成長戦略)が賞味期限切れになり、それに変えて持ち出したのが「新3本の矢」です。民間なら経営計画を変える場合、それまでの計画を検証、評価して、新しい計画を決めます。安倍政権の検証もないまま、突然、「新3本の矢」が飛び出しました。
事後検証もなく「新3本の矢」
「新3本の矢」は、「強い経済、子育て支援、社会保障」とされています。「旧3本」はデフレ脱却のための政策手段でした。「新3本」は手段でなく、ゴールみたいなもので、性格がまるで異質です。その付録として「1億総活躍」がこれまた突如、飛び出し、担当閣僚を置くと首相が言い出しました。赤ちゃんや小学生も含むのか、80歳以上(1000万人)も含むのかと、疑問だらけです。
選挙目当てのキャッチフレーズ、お気に入り政治家への懐柔策でしょうね。閣僚1人だけならともかく、事務局を置き、出向者も出すでしょうからも、官僚は反対せず、あれよあれよという間でした。閣僚ポストだけで話は終わりません。
株高、円安の神風は吹きやむ
安倍内閣のこれからは、大変です。アベノミクスが神風と仰いだのは株高と円安でした。株価は2万円以下の水準で低迷期が続くでしょう。円安もせいぜい1ドル=120円程度でしょう。株価と円安で景気が底上げされた周期は終わりました。
円安ついては「日本の実質所得の海外流出をもたらしている」という指摘がしきりです。1ドル=80円のときに比べ、輸入品などの海外への支払い増となり、日本の消費者の支払い費用が増える結果、所得が奪われるというからくりです。その分、消費が低迷する。経済は正直です。
日銀は肥大化の一途
株高と円安を演出した異次元緩和の結果、日銀は大量、巨額の長期国債(300兆円)を保有しています。総発行残高の3分1に達し、さらに増え続けています。日銀という公的部門の肥大化によってアベノミクスが支えられているのです。「閣僚の1人か2人増やすぐらいとやかくいうな」ではすまないのです。
消費税率の引き上げ(17年4月予定)の前提になる軽減税率問題のケリを、年末までにつけるのでしょうか。それも危うくなってきましたね。首相が「経済、経済、経済」というのは「景気、景気、景気」と言うのと、同義語でしょう。消費税をまた先送りすれば、国債発行でカバーせざると得ません。これも公的部門(国債)の肥大化を招くことになります。
政権の支持率が落ちています。その低下をカバーしようとしてやっていることが、結局、民間部門にツケを回すことになるのです。民間企業は業績(決算や株価)が悪化すると、スリム化を決断します。政権は支持率(民間でいう決算、株価)が悪化すると、公的部門の肥大化に逃げ込もうとします。政治と民間は逆のことをしています。政治は民間に学べ、といいたいですね。
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