新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

全国紙の元記者・中村仁がジャーナリストの経験を生かしたブログ
政治、経済、社会問題、メディア論などのニュースをえぐる

年収が直ぐ2倍になる「新しい資本主義」の方法の見聞記

2021年12月17日 | 経済

 

日本はもっと世界を見よう

2021年12月21日

 岸田首相は国会における所信表明演説で、「成長も分配も実現する『新しい資本主義』を具体化する。世界、そして時代が直面する挑戦を先導していきます」と、強調しました。

 

 ぜひそうして頂きたい。それで、私が見聞する「新しい資本主義」の現状について、身近なところで拾った断片的な見聞記を書いてみました。

 

 先日、私は就寝前にスマホを開き、アマゾンのホームページを覗いてみました。気に入った商品をみつけ、「注文」をクリックすると、翌日には配送される便利さにすっり引き付けられているからです。

 

 好みのスポーツシャツが目に入り、正札は4500円でした。実商店の半値に近い。夜の11時なのに、「翌日配送」との表示です。「本当かな」と思いながら、注文を確定すると、本当に翌日夜10時に配送されました。

 

 街角のあちこちで、配送の小型トラックを見かけます。低賃金で雇ってもらっているのでしょう。便利さの代償が深夜作業と低賃金労働です。忘年会で知人にその話をすると、恐ろしいほどの賃金格差が存在するとの意見で一致しました。

 

 知人の息子さんは、日本の大手広告会社の経験を生かし、世界的IT企業のグーグルの日本法人に転職しました。「なんと年収が一気に倍になった」そうです。それで驚いていてはいけません。息子さんの夫人はアマゾンに働いており、「年収は息子さんを上回る」というのです。

 

 日本でも最高年収の所得層に入るでしょう。彼らの高年収を支えているのが低賃金の長時間労働者です。新しい職業的スキルを身に着けていかないと、その世界から脱出できない。

 

 日本からも、グーグルやアマゾンに匹敵し、世界に飛躍できる企業、産業が育っていく必要もあります。そうした企業はほとんど見当たりません。

 

 安倍元首相が15日、バラマキ財政を批判した矢野財務次官を意識した発言をしました。「日本がタイタニック号だったら、タイタニック号が出す国債を買う人はいない。タイタニック号でないから、ちゃんと売れている」。

 

 世界の動き見ていないと、こういう発言になります。米国中央銀行(FRB)は15日、金融緩和政策を縮小を加速し、来年には3回の政策金利の引き上げをする流れになりました。

 

 日銀は「消費者物価2%上昇まで異次元金融緩和を続ける」(黒田総裁)です。 日銀は17日、「コロナ対応の縮小を決定、大規模緩和は維持」という方針を決めたものの、どこかおどおどした表現です。

 

 米国債の金利が上がれば、どうなるのでしょうか。日本国債(金利ゼロ)を保有している海外投資家(約7%)は、日本国債を売り、米国債を買うでしょう。日本の投資家も米国債に向かうかもしれません。

 

 コロナ後の景気情勢、インフレ懸念を意識して、欧州も金融政策の転換に向かい始めました。英国は16日、政策金利を0・25%に引き上げました。欧州中央銀行(ECB)も量的緩和政策の打ち切りを決めました。

 

 日本が欧米の動きに本格的に追随しなければ、円安を招き、輸入物価が上がる。予期しなかったプロセスであっても、「物価2%上昇」が達成されれば、いよいよ異次元緩和の転換に向かわざるを得ません。日銀が大量の国債購入を縮小していけば、大規模な財政出動も規模の縮小に迫られます。

 

 日本は世界に連動しており、単独に存在しているのではない。「国債はちゃんと売れている」は、世界を見ていない短絡した発言です。

 

 岸田政権は35兆円もの補正予算(3度目)を組み、21年度の予算総額は175兆円という空前の規模になりました。22年度当初予算も107兆円(4年連続で100兆円突破)の見込みです。

 

 国債発行残高は約1000兆円ですから、将来金利が1%上がれば、利払い費は最終的に10兆円(年間)増える。2%なら20兆円増える。ゼロ金利に甘えていたバラマキ財政が壁にぶつかり、目覚める時がきます。

 

 桁外れの金融財政政策に頼り切っているうちに、産業界、企業も挑戦的な精神を失ってしまいました。「新しい資本主義」を目指すならば、そのことを噛みしめて考えるべきなのです。

 

 「財政の健全化」という表現は正確ではありません。「新しい資本主義」にとっては、株価の下落などを恐れず、「金融財政政策に頼らない経済を確立していく」というべきなのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿