早すぎる公表に裏がある
2019年4月10日
後手後手が目立つ政府にしては、あまりにも手回しがよすぎる。政府は5年後の2024年度に紙幣のデザインを一新すると発表しました。前回が2年前の発表でしたから、なぜこんなに公表が早いのかとの疑問が沸いてきます。相当前から準備はしていたにせよ、発表のタイミングには裏がありそうです。
それともう一つ。お札は日銀券と呼び、法律は「日本銀行が発行する」としています。おかしなことに、新紙幣の発行、デザイン、公表は、麻生財務相が段取りを整え、安倍首相と相談して最終的に決定したと、メディアは伝えています。日銀総裁の存在に触れていません。どうしたことでしょうか。
今回の決定の動機を簡単にいえば、「政権の人気を上げる話題は何でも欲しい」、「新元号の実施というタイミングに発表を合わせ、安倍政権のうちに、時代の雰囲気を変えたかった」。また、前回の刷新は04年ですから「24年度は20年に一度の刷新というサイクルに当たり説明は通る」ですか。
それにしても5年前に発表するというのは、どう考えても早すぎる。そこには隠された狙いがあり、「旧札を表に出させ、高齢者に多いタンス預金を減らしていく」ということでしょうか。旧札もこれまで同様に使えますから、急ぐ必要はないにしろ、「いずれ旧札も失効する時がくるのではないか」、「旧札をため込んでいると疑われる」との心理的な圧力はかけられます。
旧札はいつまでも使えるの
新聞に新紙幣の発行のニュースが載ったのは、9日の夕刊です。「新札に切り替わっても、旧札は使えるはずだ」は常識ではあっても、念のため記事で確認したかった国民は多いでしょう。経済専門紙の日経にはそのことに触れていませんでした。「あれっ、どうしたのかな。日本ではタンス預金があまりにも多いので、政府は新円切り替え(旧札の執行)を狙っているのか」と、一瞬、思いました。
「旧札は引き続き使える」と、日経が書いたのは翌日の朝刊です。読売は朝刊1面で「現行の日本銀行券が使えなくなるなどと、だます詐欺行為への注意を財務省は注意を呼び掛けている」と、回りくどい表現です。はっきり表現したのは、なんと社説欄でした。「現在のお札は引き続き使える」と。
国民が真っ先に知りたい関心事は、旧札をいつまで使えるかです。「そんなことは言わなくても分かっているはず」と、財務省は思っているのでしょうか。でもね、法律で銀行券(お札)の失効を定めない限り、使えるとの決まりを知っているのは一部の専門家だけでしょう。
タンス預金は脱税の温床
1946年に終戦直後のインフレに区切りをつけるため、新円切り替えが行われ、それ以前のお札は失効しました。もっとも、古くなっても、例えば58年発行の1万円札、63年の千円札は今も通用します。なぜそうした丁寧な説明をしないのか。やはり「現金を自宅に隠して、相続税逃れなどに使われるタンス預金をなくしていきたい」との思惑が財政当局にはある、とみます。
昨年末時点で、個人(家計)が保有する現金は前年比2%増の93兆円で、過去最高を記録しました。5年前に比べ、20兆円も増えています。銀行の貸金庫に寝かせてあるのも含めると、80兆円に達するとの推測もあります。「ゼロ金利政策で金利はつかない」、「相続税は増えるから隠す」の他、時々聞かれる「財政破綻、日銀破綻ともなれば、個人資産も無傷ではない」とのささやきも影響しているのか。
冒頭に触れた日銀の役割はどうなっているのか。日本銀行法では「日銀は日銀法を根拠に日本銀行券を発行して、流通させる。国立印刷局(旧大蔵省の印刷局)が製造し、日銀に納入する。日銀は製造費用(1万円札で20円程度)を払って受け取る」ことになっています。
発表したのは、麻生財務相です。「図柄や発表時期は首相と麻生氏の2人で詰めた」(日経、10日)そうです。もともと日本で日銀の独立性が薄らいでいますから、日銀総裁は影も形も感じられません。「日銀券」というのですから、何らかの発言があってしかるべきです。
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