「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「採用時に最初に面接をしたのは私なんです。コミュニケーションスキルが高いように見えたので採用したのですが、違いました。私に見る目がなかったのか・・・」
これは、先日ある企業で長年採用担当をされている方から聞いた言葉です。その社員は採用時にはとても感じがよく、コミュニケーションもきちんととれる人だと思い採用したそうですが、採用数か月後に行っている面談ではコミュニケーションがうまく取れず、全く話がかみ合わなかったとのことです。
日本経団連が2018年まで毎年実施していた調査に、「経営者が大卒(高卒)新人を採用する際に重要視すること」があるのですが、16年連続して回答のトップになるのがコミュニケーションでした。以前は就職活動中の学生の中にはこの調査を踏まえて、自らのコミュニケーションスキルの高さをアピールする人が相当程度いたということを幾度となく聞いていました。この調査は中止されて久しいのですが、現在もコミュニケーション力をアピールする学生は少なくないようです。
それでは、この応募者のコミュニケーション力について、採用する側はどのように見極めると良いのでしょうか?実際のところ、コミュニケーションスキルの有無を見極めるのは決して簡単なことではありません。それには様々な方法があると考えますが、私のこれまでの経験からは面談のみならず集団討議が有用だと考えています。
集団討議では、基本的には事前準備ができない中、本番では限られた時間で最大限の成果を出すために初対面のメンバー同士が役割を分担して協力し合い、テーマについて結論を出すことになるわけです。そのため様々な制約条件が多い中で相当なプレッシャーになっているはずです。
その中で、どうやってチームとしての結論・成果を出していくのかはなかなか難しい課題です。伝えるべきことは発言し、他者の話もしっかり聞く。自分とは異なる意見の人に対しては、質問したり、状況に応じて共感したり、発言が少ない人には発言を促ししたりすることが必要です。複数の面接官を前に成果を出すわけですから、それは大変なことだと思います。
しかし、私はこのような制約やプレッシャーの中で行う集団討議には、とても意味があると思っています。それは、当日知らされるテーマに対してインターネットで調べることもできず、周りにいるメンバーの属性もほとんどわからない中で議論を行うことになるため、成果を出すためには取り繕ろっていないありのままの自分を出さざるを得ないからです。まさに「その人らしさ」がはっきり出るわけです。
私は、これまでたくさんの集団討議の場に立ち会ってきました。教科書的な対応をする人、指示していないことをやり始める人、板書係に立候補したもののホワイトボードの前で立ち尽くしてしまう人、そして予定外の行動をとり始めた人を前に呆気に取られている人がいたり、感じよくフォローする人もいたりする人もいます。また、流ちょうではあるけれども聞き手には全然伝わらないような話をする人もいれば、逆にしどろもどろで汗をかきながら話している人が説得力をもってその場に影響力を発揮したりする例もあります。
もちろん、集団討議のみで全てを確認できるわけではありませんが、それでも集団討議は人間の本質を確認することができる一つの有効な手段だと私は考えています。今後も採用選考時に集団討議の面接官の機会をいただいた際には、精一杯務めさせていただこうと考えています。