「人と接する仕事をしたい」「人の役に立つ仕事に就きたい」
学生からよく聞かれる言葉です。
一方、学生が希望する配属先は「広報」「企画部」「マーケティング」などの華やかなイメージの部署を希望している人が多いようです。
そこで彼らに「営業職は?」と尋ねると「営業はちょっと・・・あまりやりたいとは思わないです」という答えが返ってきます。
さらに「なぜ営業の仕事は嫌なの?」と突っ込むと、「大変そうですし、それにしゃべるのが苦手なんです」とのことで、これは男女に共通する傾向だと感じています。
先日お会いした製造業の採用担当者によると、採用試験の面接時には「営業もやってみたいです」と言うけれど、入社後に希望配属部署を確認すると「営業は希望しません。経営企画や広報やマーケティング部に行きたいですと言うんです。営業もやりたいと言っていたことは何だったんだと思ってしまいます。」とのことでした。
また、この採用担当者は「新卒者を経営企画や広報などに配属することは滅多にない。まずは、営業で現場を学んで欲しいと考えているので」ともおっしゃっていました。
それなのに、学生はどうして営業職を敬遠するのか?
学生に営業職のイメージを聞くと、「営業数字に追われ事務所の壁には営業数字を示す棒グラフが張り出され、計画未達だと上司から厳しく叱責される仕事」だと想像しているとのことです。さらに契約を獲得するまでは、事務所に戻ることを許されない、そのために口八丁手八丁で売る過酷なイメージがあるようです。
こうしたイメージはまるで何十年も前の営業職のようですが、学生時代に営業を経験をする機会のない学生がこのような印象になるのは仕方ないのかもしれませんね。
こうした中、12月2日の朝日新聞に「営業イロハ 大学で」との記事が掲載されていました。営業のノウハウを大学の正規授業で教え、単位を与える取り組みが始まっているとのことです。
就職活動に強い「即戦力」を育て、卒業後の早期離職を防ぐ狙いもあるそうです。受講した学生は「人と接する楽しさがわかり、営業のイメージがガラッと変わった」と話すなど、比較的良好のようです。
でも、果たしてこれが即戦力として役立つことになるのか、営業職の経験が長かった私にはちょっとだけ疑問です。
営業はお客様あってのもので、顧客のニーズはどこにあるのか確認したり、顧客が気づいていない潜在ニーズの確認などは顧客との信頼関係を築く中で、徐々に獲得していくものです。
時には、顧客からクレームなどの批判的な意見をいただくこともある中で、状況に対応しながら少しずつ信頼を得て契約に至るもので、そのプロセスこそがまさに営業の醍醐味とも言えるのです。そのスキル獲得にはある程度の時間がかかりますし、決してハウツーで一朝一夕にできるようにはならないと思うのです。
ただ、こうした取り組みで営業に対するイメージが良くなり、「間口」が拡がる意味合いは大きいと思いますから、この取り組みの成果を見守っていきたいと思います。
(人材育成社)