毎年、暑い季節になると思い出す一枚の絵があります。
川端龍子(かわばたりゅうし)の「河童」(かっぱ)です。
この絵は(写真は大田区立龍子記念館より)今から14年前、大田区立龍子記念館の夏季名作展で鑑賞したのですが、それ以来、毎年夏になると必ず思い出します。
川端龍子(1885年~1966年)は、日本画家、俳人で、1963年に自身の喜寿を記念し、長年住んだ大田区に龍子記念館を設立しています。
龍子には河童を人間そのものに置きかえた、愛情深くほほえましい作品や、世相を反映した作品も多かったそうです。
この絵も、河童がパイナップルを片手に持ちそれを見つめていますが、河童の表情を見ていると、まるで人間がパイナップルを手にしているようにさえ見えます。
ご存じのとおり、この河童、日本の妖怪・伝説上の動物で、全国で伝承され、呼び名や形状も各地方によって異なり、その正体は水神、またはその依り代なのだそうです。
河童と言えば、私は子どもの頃から黄桜のコマーシャルで慣れ親しんでいましたが、そういう方も多いのではないでしょうか。
清水崑さんや小島功さんが描く河童は、架空の動物とはいえ実に人間的で、酔っぱらったり、花見をしたり、ちょっとエッチで色っぽく、とてもユーモラスで身近に感じていました。
夏になると河童の絵を思い出すのは、やはり河童が水の化身だからなのだろうと思いますが、もう一つ、風刺画として面白みを持って描かれることが多いからかもしれません。
ところで、研修の現場では、理論を伝えた後でそれを具体的な事例で教えてほしいという要望をいただくことがよくあります。そんな時、事例を戯画にして説明ができればいいのにと思います。
戯画なら面白おかしく表現しながらも、その真意をきちんと伝えることができるように思うからです。とは言っても、残念ながら戯画が描けるわけではないのですが・・。
さて、私が夏になると冒頭の絵を思い出すのには、もう一つ理由がありました。それは河童がいつも頭に水のお皿を乗せているから。暑いのが苦手な私にとって、涼しげな河童を羨ましく思っています。今年のように暑い夏でも乾くことのない潤い、とても大事ですよね。
(人材育成社)