今日、神奈川県内に熱中症警戒アラートが発令されました。天気予報では盛んに
「危険な暑さですから、不要不急の外出は極力控えるようにしてください。」
と注意喚起されていましたが、こんな暑さの中で競技に参加しているパラリンピアンの皆さんは、さぞかし大変な思いをしていることでしょう…。
ところで、今日8月26日はイギリスの作曲家ヴォーン・ウィリアムズの祥月命日です。

とかくイギリスには、ヨーロッパ本土と比べて偉大な作曲家と呼ばれる人が少ないという不名誉な定評があります。しかし実際に見てみると、古くはヴィオラ・ダ・ガンバのコンソートや宗教音楽を中心とした様々な分野に多くの作品を遺しているトマス・タリス(1505〜1585)、リュート独奏曲や歌曲に多くの名作を遺したジョン・ダウランド(1563〜1626)、イギリスバロックの巨匠ヘンリー・パーセル(1659〜1695)がいますし、近代においては《愛の挨拶》やチェロ協奏曲等で知られるエドワード・エルガー(1857〜1934)や組曲《惑星》で有名なグスターヴ・ホルスト(1874〜1934)、そしてヴォーン・ウィリアムズがいます。
レイフ・ヴォーン・ウィリアムズは1872年10月12日にグロスターシャー州ダウンアンプニーに生まれました。7歳からヴァイオリンを習い、1890年には王立音楽大学に入学しますが2年後に休学し、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジに入学して音楽と歴史を専攻し、音楽と文学の学士号を取得しました。
また1907年にはモーリス・ラヴェル(1875〜1937)を紹介され、作曲とオーケストレーションのレッスンを受けました。その後、1910年には《タリスの主題による幻想曲》と《海の交響曲(交響曲第1番)》を初演して好評を得ました。
1919年には王立音楽大学の作曲科教授にも就任しました。しかし、1934年に親友のホルストが死去したのを皮切りに妻や周囲の人を次々と亡くし、ヴォーン・ウィリアムズ自身も1958年に最後の交響曲となった第9番を初演した後の8月26日に、ロンドンで心臓発作のため亡くなりました(享年85歳)。
ヴォーン・ウィリアムズの作風はイギリス民謡風なテイストが特徴的で、その旋律は時に

イギリスの画家ウィリアム・ターナー(1775〜1851)の絵画のようだとも形容されます。全部で9曲ある交響曲のいくつかは現在でもしばしばコンサートに採り上げられていて、吹奏楽曲や弦楽合奏曲もよく演奏されています。中でもバス・テューバ協奏曲はテューバ奏者の大切なレパートリーとなっています。
そんなヴォーン・ウィリアムズの作品の中でも際立って有名なのが《グリーンスリーヴスによる幻想曲》でしょう。
1928年にヴォーン・ウィリアムズは、シェイクスピアの喜劇《ウィンザーの陽気な女房たち》に基にしたオペラ《恋するサー・ジョン》を作曲しました。このオペラはジュゼッペ・ヴェルディの最後のオペラ《ファルスタッフ》とほぼ同じテキストに基づく作品で、その第3幕の間奏曲としてエリザベス朝からイギリスで親しまれてきたグリーンスリーヴスのメロディを使いましたが、後にこの間奏曲をラルフ・グリーヴスが編曲して独立させたのが、この《グリーンスリーヴスによる幻想曲》です。
初演は1934年、ロンドンにおいてヴォーン・ウィリアムズ自身の指揮で行われました。この愛すべきイギリス民謡のメロディに基づいた作品は、この編曲以外にも様々な楽器の独奏用に編曲されていて、作曲家自身の編曲によるピアノ独奏版も出版されています。
そんなわけで、今日はその《グリーンスリーヴスによる幻想曲》の演奏動画を転載してみました。1962年に、サー・ジョン・バルビローリの指揮で演奏された録音でお楽しみください。