今日か入りましたが、日差しの乏しい寒い陽気となりました。明日は節分ですが、春を感じるにはほど遠い天気です。
ところで、今日2月1日はプッチーニの《ラ・ボエーム》が初演された日(サムネイルは初演時のポスター)です。歌劇《ラ・ボエーム》(La Bohème)は、
ジャコモ・プッチーニ(1858〜1924)の作曲した4幕オペラで、今日最もよく演奏されるイタリアオペラのひとつです。
《ラ・ボエーム》の物語は、アンリ・ミュルジェール(1822〜1861)が1849年に発表した小説・戯曲『ボヘミアン生活の情景』からとられました。台本はジュゼッペ・ジャコーザ(1847〜1906)とルイージ・イッリカ(1857〜1919)のコンビによるもので、プッチーニ自身の台本に対する注文が多く完成が難航したものの、短編の集積である原作の雰囲気をよく伝え、オペラ的な見せ場に富む出来映えとなりました。
実は歌劇《道化師》で知られる作曲家ルッジェーロ・レオンカヴァッロ(1857〜1919)も同時期に《ラ・ボエーム》の作曲を進めており、以後ふたりの仲は険悪となってしまいました。レオンカヴァッロの発表した《ラ・ボエーム》がいわゆるヴェリズモ・オペラ的な感情の激しく渦巻くものになったのに対して、プッチーニの《ラ・ボエーム》は青春群像と男女の恋愛を描いた叙情的なオペラになりました。
《ラ・ボエーム》の初演は1896年2月1日、アルトゥーロ・トスカニーニの指揮によりトリノ・レージョ劇場で行われました。ヴェリズモに傾倒していた当時の批評家の不評はあったものの初演はまずまずの成功をおさめ、各地での再演の度に聴衆からの人気は次第に高まっていきました。
日本でも《ラ・ボエーム》はかなり人気の高い演目ですが、その理由のひとつに、このオペラが日本人の好きな交響曲のような構成になっていることがあると分析する向きもあります。物語が快活な展開を見せる第1幕、陽気で展開の早いスケルツォのような第2幕、緩徐楽章のような甘く切ない第3幕、そして怒涛の展開から劇的な結末へと流れる第4幕という展開が、まるて交響曲のようだ…という意見もあるようです。
オペラ全編通すと2時間以上かかるので、今日はその中から個人的に好きなロドルフォとミミ、マルチェッロとムゼッタによる四重唱「さらば甘い目覚めよ」 "Addio, dolce svegliare alla mattina!"をご紹介しようと思います。
愛し合いながらも互いの行く末を案じ、
「花の咲く頃に別れよう。」
とミミとロドルフォが手を取り合う横で、前の第2幕でよりを戻したばかりのくせに酒屋から飛び出してきて
「他の男に色目使いやがって!」
「亭主面しやがってなにさ!」
と、しょーもないことで互いを罵り合うムゼッタとマルチェッロ。ただ美しいだけでなく、愛し合うからこその別れと、痴話喧嘩の勢いで
「売れない看板絵描きw」
「毒ヘビ!」
「ヒキカエル!!」
「魔女め!!!」
と罵詈雑言の応酬での別れという全く質の違う別れがプッチーニの美しい音楽にのって同時に展開されていくという、なかなかシュールな場面です(笑)。
そんなわけで、今日はプッチーニの歌劇《ラ・ボエーム》から、第3幕四重唱をお聴きいただきたいと思います。ルチアーノ・パヴァロッティ、フィアンマ・イッツォ・ダミーコ他の歌唱で、まるっきり正反対の二組の別れの場面をお楽しみください。