今日も神奈川県はかなり冷えこみました。電気代が気になるところですが、風邪をひいてしまっては元も子もないので、暖房器具は必須です。
ところで、今日12月23日は上皇陛下のお誕生日ですが、ベートーヴェンの《ヴァイオリン協奏曲》が初演された日でもあります。《ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61》は、
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770〜1827)が1806年に作曲したヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲で、ベートーヴェン中期を代表する傑作の1つでもあります。
ベートーヴェンは、ヴァイオリンと管弦楽のための作品を他に3曲残しています。作品40および作品50である2つの《ロマンス》と、第1楽章の途中で未完に終わったハ長調の協奏曲(WoO 5、1790-92年)がそれにあたり、完成したヴァイオリン協奏曲はこの1作しかありません。
しかしその完成度はすばらしく、『ヴァイオリン協奏曲の王者』とも、あるいはメンデルスゾーンの作品64、ブラームスの作品77、チャイコフスキーの作品35とともに『4大ヴァイオリン協奏曲』とも称されています。 この作品は、同時期の《交響曲第4番》や《ピアノ協奏曲第4番》にも通ずる叙情豊かな作品で、伸びやかな表情が印象的です。
第1楽章はニ長調のアレグロ・マ・ノン・トロッポ、4分の4拍子のソナタ形式。
ティンパニの連打に木管のやわらかな合奏が続き、ほどなく力強い総奏がきます。第2主題もまた木管によって穏やかに提示されます。
オーケストラが簡素ながら雄大に序奏部を結ぶと、いよいよヴァイオリン・ソロの登場です。独奏ヴァイオリンも、冒頭のティンパニ連打のリズムを刻みつつ、第1主題、第2主題を繰り返しつつ、展開していきます。
中間部でのオーケストラの総奏はさすがの迫力ですが、再びヴァイオリンが冒頭と同じ上行音型で帰ってくると、影のある展開部に入っていきます。そしてティンパニと低弦が刻むリズムが遠雷のように響く中で哀愁を漂わせながらヴァイオリンが歌うと、力強い再現部から長大なコーダで結ばれます。
因みに、この第1楽章だけで演奏時間が20分を超えます。更にカデンツァの長さによっては25〜26分になることもあり、この楽章だけでこの曲の半分以上の長さになります。
第2楽章はト長調のラルゲット、4分の3拍子の変奏曲。
弱音器をつけた弦楽合奏が夢見るようなテーマを奏すると、クラリネットとホルンのアンサンブルにヴァイオリンソロが絡みつくように展開していきます。その後、3回の変奏を重ねてカデンツァに入り、そのまま第3楽章に入っていきます。
第3楽章はニ長調のアレグロ、8分の6拍子のロンド。
実に楽しい、ウキウキするようなロンド主題をヴァイオリンソロが歌い、オーケストラがそれに続きます。ロンド主題の合間にヴァイオリンが変幻自在に新しい旋律を繰り出して踊りながら技巧を尽くしますがそれをしつこく感じさせない自然さで、木管との絡みも小気味よく流れていきます。
形式でいうと、A-B-A-C-A-B-Aの構造になっていて、2回目のBのあとにカデンツァがあり、最後のAは結尾に向けて大いに盛り上げます。その後急に音量を落としてヴァイオリンが静かに短く語ったのちに、フォルテッシモの和音をオーケストラが2回鳴らして音楽を締めくくります。
そんなわけで、今日はベートーヴェンの《ヴァイオリン協奏曲 ニ長調》をお聴きいただきたいと思います。レオニード・コーガンのヴァイオリン、エマニュエル・クリヴィヌの指揮による1977年のライブ映像で、4大ヴァイオリン協奏曲の筆頭を飾る壮大な音楽をお楽しみください(アンコールにバッハの《無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ》第2番より『サラバンド』の演奏もあります)。