今日は朝から曇りがちだったこともあってか、昨日と比べると随分涼しくなりました。今までは暑さに文句を言っていましたが、だからといってこうも急に気温が下がると身体が追いつきません…。
ところで今日は、現代最高のテノール歌手の一人ルチアーノ・パヴァロッティの誕生日です。
ルチアーノ・パヴァロッティ(1935〜2007)は1935年の今日、イタリアのモデナで生まれました。その輝かしい声から「神に祝福された声」「キング・オブ・ハイC(二点ハの王者)」「イタリアの国宝」と評され、豊麗な美声、申し分ない声量、明晰な発音、輝かしい高音が魅力の、20世紀後半を代表するオペラ歌手の1人として今なお語り継がれています。
日本には1971年にNHKが招いたイタリア歌劇団の一員として初来日、《リゴレット》のマントヴァ公爵を歌いました。その時、聴衆の一人が感激のあまり舞台の上ってパヴァロッティに抱き着いたといいます。それから度々来日してコンサートを開催し、2002年にはプラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラスと共に結成した『3大テノール』最後の公演となった横浜アリーナ公演を、2004年には自身の引退ワールド・ツアーを東京から開始しました。
亡くなる前年にはトリノ冬季五輪の開会式に登場してプッチーニの歌劇《トゥーランドット》の名アリア『誰も寝てはならぬ』を披露し、これが生前最後のパフォーマンスとなりました。ただし、このパフォーマンスは生演奏ではなく事前に録音したものに合わせた口パクだったことが明るみに出ましたが、真冬の野外で老齢のパヴァロッティに歌わせることを拒んだパヴァロッティ側と冬季五輪運営側との間で折り合いをつけた結果、そのようなかたちになったということも発表されました。
パヴァロッティは、コンサートツアーではよく
白いハンカチを手にして歌っていました。これは汗拭きであると共に一種のおまじないの道具でもあったようですが、私が認識した頃にはすっかりパヴァロッティのトレードマークになっていました。
パヴァロッティのレパートリーといえば何と言ってもヒロイックなヴェルディやプッチーニのオペラですが、それよりも前の時代のベッリーニやドニゼッティといった、いわゆるベルカントオペラ作品もよく歌っていました。その中でも個人的に好きなのが、先日稲城市民オペラでも公演されたドニゼッティの《愛の妙薬》です。
輝かしいハイトーンで歌い上げるヒーローとはまた違った内気で奥手で一途な青年を演じるパヴァロッティは何とも愛らしく、名アリア『人知れぬ涙』で愛するアディーナへの思いを切々と歌い上げる姿には、思わず涙腺が緩みます。勿論《イル・トロヴァトーレ》や《オテロ》《トゥーランドット》といったオペラアリアも素晴らしいですが、《愛の妙薬》のネモリーノにはまた違ったパヴァロッティの魅力が見て取れます。
そんなわけで今日はパヴァロッティの歌唱による《愛の妙薬》の名アリア『人知れぬ涙』の動画を転載してみました。劇場がビリビリいうほどのハイトーンとは一味違うパヴァロッティの歌をお楽しみください。