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アポロ

 バスを運転していたら、後部座席の女子中学生が声をかけてきた。
「先生、これ食べる?」
「なに?」
「アポロチョコ」
「アポロチョコ?懐かしいなあ・・、ちょうだい」
「わかった」と言って、3粒くらい手渡してくれた。すぐに口に入れて、
「うまいなあ、本当にうまい」
私は思わずうなってしまった。一年ほど前に、「ショコライフ」の食べ比べを記事にしたが、そのときに食べた「とちおとめ」と「リッチミルク」が一度に味わえたようで、ものすごく美味しかった。あまりに感動したので、その女の子に200円渡して、「これでアポロを2つ買ってきて。1個はあげるから」と頼んだ。
「わかった」と快く引き受けてくれたその生徒は次の塾のときに「はいっ」と、一箱手渡してくれた。


 アポロチョコの形は、アメリカの宇宙船アポロが月旅行を終えて戻ってきた時の形をかたどったものだったような記憶がある。円錐形の先端半分がイチゴ味でその下がミルク味のチョコでできている。口の中にいれると、イチゴとミルクの味が次第に溶け出して、渾然一体となってハーモニーを奏でるように見事な美味しさを味あわせてくれる。箱を見ているだけで食べたくなってくる。


 数えたら1箱に35粒はいっていた。思い切りよく口の中に詰め込めるだけ詰め込んでみようかな、とも思ったがそれでは面白味にかける。何かいい案はないかと、下らぬブロガーの血が騒いでしまった。すると、
 「イチゴとミルクが別々に溶け出してお互いの相乗効果で美味しさを生み出しているが、それなら最初からイチゴとミルクを混ぜ合わせてしまった物を食べたらどんな味がするのだろうか?」
などという素朴な疑問が浮かんできた。「よし、試してみよう!」と決断は早かった。
 まず20粒を皿に入れ、レンジにかけて溶かしてみることにした。

  

 しかし、なかなか溶け始めず、3分、6分と時間を延長していく間にとうとう9分で真っ黒焦げになってしまった。何で???・・・。台所全体が焦げ臭いにおいで充満したが、これくらいのことで挫折はしない。気を取り直して弱火にかけた鍋で溶かすことにした。


 すぐに溶け始めたので、慎重にかき混ぜながら全体が溶けるまで待った。焦げ付く寸前で火から離して、スプーンで溶けたチョコをかき集めた。

 

 なんだか変なものを想像してしまう形状だが、冷蔵庫で冷やして固まらせたものが右の写真だ。固まっても、とぐろを巻いているようであまり食べる気は起こらない・・・。でもここまで来て躊躇っていられない。目をつぶって口に入れてみた。
 う~~~ん、どうだろう、決してまずくはないが、美味しさの程度はかなり劣るように思う。口に入れて二つの味が一つにミックスされていく過程のワクワク感というものがまるでない。ただのイチゴミルクチョコの味だ。もちろん視覚的なマイナス面は差っぴいて評価しなければならないが、それでも問題なく、普通に食べるアポロチョコの方が何倍も美味しいことが分かった。
 
 などという結論は、やる前から分かっていたけど、やっぱり何でも試してみなくちゃね・・・。


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