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ポカポカ

 このところ毎日寒い。空気が冷たくて頬が切れそうなほどだ。5ヶ月ほど前には40度近くもあった気温が今はもう0度に近い。よくこんな温度差を耐えられるものだと人間の適応力には驚く、大したものだ。
 我が家には縁側がある。座敷に続いているが、障子を閉めてしまえば温室のようになる。いくら外は寒くても、陽さえ出ていればポカポカと暖まってくる。温室効果を実体験できる貴重な空間だ。朝目が覚めてパンと新聞を持って縁側に入り込んで、しばらく時間を過ごす、なかなかの贅沢だ。塾という夜中心の仕事に携わっていると、色々大変なこともあるにはあるが、こんな珠玉の時間を過ごすことができるのも朝はゆっくりできる仕事ならではだ、などとしみじみ思うのもまた楽しい。
 そんな時に、毎日新聞で「湯たんぽ人気 体も懐もポカポカ レトロでエコ 月たった77円」などという見出しの踊る記事を読んだ。「省エネ」や「昭和レトロブーム」を原油高が後押しし、今冬は多くの人が湯たんぽを購入したため、品薄状態が続いているという。そうか、湯たんぽか、と思いながらも、湯たんぽにどれだけの効果があるのかよく分からなかった。と言うのも、私は湯たんぽを使ったことがあまりないからだ。確かに子供の頃、家に湯たんぽはあったような気がする。しかし、誰も使っていなかったように思う。その代わりに私の家では行火(「あんか」と入力したらこう変換できた。知らなかった・・)を使っていた。直方体で蓋を開くと半分に割れ、その真ん中に火をつけた豆炭を入れる。蓋を閉めて、厚い布でくるんだものを布団の中の足元の方に置いておくと一晩中ポカポカ暖かかった。家族一人に一個ずつの行火があって、豆炭に火をおこすのを見ているのも楽しかった。今ではもうどこかに行ってしまって、探しても見つからないだろうからネット上で写真を探してきた。


 まさしくこれだ。真ん中に真っ赤になった豆炭を入れて蓋を閉めると、本当に暖かかった。あまりに熱くてやけどしたこともあったような、その痕がずっと足に残っていたような気がするが、今見てもそんな痕など見当たらないから、ずっとずっと以前のことだったのだろう。ただ、豆炭の不完全燃焼で一酸化中毒の被害にあった人も多かったので、我が家では使わなくなったようにも思うのだが、それがいつ頃だったのかは正確に覚えていない。
 それにしても子供の頃の方が、今よりずっと寒かったように思う。昔は水溜りに厚い氷が張ったし、太い氷柱も軒下からぶら下がっていた。登校途中にキャーキャー言いながら、氷柱を折って歩いたのを覚えている。寒かったが、雪はめったに降らなかった。子供の頃に大雪になった記憶はほとんどない。今の方が気温が高い割に、時々大雪が降る。ゲリラ的な寒さとでも言うべき寒波が襲ってきて、どかっと雪を積もらせる、それは、夏にスコールのような土砂降りが多くなったのと呼応しているのかもしれない。その土地の気候風土などたやすく変わらないものだと思っていたのに、私の生きてきたほんのわずかな間(地球規模から見て)に、これほど気候が変わってしまったのはどう考えても変だ。
 私立中学の入学試験もいよいよ始まったが、地球温暖化をテーマにした問題が、国語・理科・社会の3分野であれこれ出題される。頻出分野と言ってもいいだろう。あまりに繰り返し出題されるので、過去問をずっとやってきていると、生徒たちは地球温暖化の原因から影響までほとんど網羅するようになっている。今はまだ頭の中の知識に過ぎないが、長じて温暖化問題に取り組む研究者も受験生の中から出てくるかもしれないから、有意義な問題ではあろう。

 などとポカポカした縁側の陽だまりの中で、私の思いは広がり、しばしの心の安らぎを得られる・・。
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