★ 乱読を始めた。身近にある本を手当たり次第、読めるところまで読むことにした。野村進「千年、働いてきました」(角川)、上杉隆「官邸崩壊」(新潮社)、茂木健一郎「生きて死ぬ私」(ちくま文庫)、浜矩子「経済は地球をまわる」(筑摩書房)、レスリー・デンディ+メル・ボーリング「自分の体で実験したい」(紀伊国屋書店)・・・。
★ 本棚の「青春の一冊」(文春文庫)という本が目についたのでページをめくっていると、城山三郎氏が原田統三「二十歳のエチュード」のことを書いている記事が目についた。
★ 「二十歳のエチュード」は懐かしい書名だ。ずっと昔に読んだ覚えがある。本棚を見渡すと、あった。何十年ぶりかで読み始めた。
★ 「二十歳のエチュード」は、20歳を目前に入水自殺した青年の手記である。手元にあるのは角川文庫版で昭和48年の発行になっているから、中学生か、高校に入りたての頃に購入したのだろう。日に焼けたページ、文字列のゆがみは活字印刷を物語る。
★ 森有正氏の格調高い「序」に始まる。そして3つのエチュード。今尚、難解な文章が羅列されている。はっきりいって何が言いたいのかわからない。わからないが、豊かな語彙と歯切れのよい断章が、心地よい音楽を響かせる。不思議だ。
★ 全編に覆いつくされたナルシズム。純粋な精神を追求しているのか。死を以って芸術性を完結させるというのか。今日こうして読まれることを目論んで、死後にも仕掛けを残したのか。何と言う傲慢さ。二十歳にしてこれほどまでと思う早熟性と成熟性。驚かされるばかりだ。
★ 平易な文章があふれている今日、難解な精神はまた新鮮であった。