じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

長野まゆみ「夏緑蔭(なつりょくいん)」

2018-05-02 19:49:02 | Weblog
☆ 長野まゆみさんの短編集「鳩の栖」(集英社文庫)から「夏緑蔭」を読んだ。

☆ どこまでが現実でどこからが幻想なのかわからないけれど、とてもノスタルジックで心地よい作品だと思った。

☆ お寺の前の茶舗の情景がいい。夏の暑さで汗が噴き出そうなのに、涼しさを感じる。藤棚の緑の蔭、心太、氷菓子、曹達水、ラムネ、風鈴、氷を掻く音、そしてヨーグルト。牛乳にレモン汁を合わせただけのヨーグルトなのになぜかおいしそうだ。
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桜木紫乃「かたちないもの」

2018-05-02 16:01:24 | Weblog
☆ 桜木紫乃さんの短編集「起終点駅」(小学館文庫)から「かたちないもの」を読んだ。

☆ 短編小説は出来不出来が鮮明に出る。陸上で言ったら短距離走のようなものだ。設定の面白さで読ませるか、文章のうまさに酔わせるか、あるいは構成とオチで納得させるか。

☆ この作品は、おもしろかった。

☆ 主人公は日本有数の化粧品会社の幹部社員。彼女に納骨式に参列してほしいという手紙が届く。かつてつきあっていた男。会社の先輩で仕事のノウハウを教えてくれた男。10年前に職もそして彼女も捨てて北海道に帰ってしまった男。その男が亡くなったというのだ。彼女は少し迷ったが参列することにした。

☆ まず情景がとてもきれいに描写されている。函館の夜景の美しさ。エンディングも素敵だ。女性の微妙な心の揺れ、仕事の秘訣、それらもとても魅力的に書かれている。それにところどころのセリフがいい。

☆ 大人の恋を疑似体験したい人にお勧めの作品だ。ちょっぴり苦いけれど。
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