じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

堀江敏幸「ピラニア」

2023-09-02 14:21:00 | Weblog

★ 昨夜、NHK-BSで放映された「英雄たちの選択」、地震計の研究で有名な大森健吉が取り上げられていた。

★ 明治以降、創設された地震の研究。研究者たちの地道な調査の結果、地震の本質が少しずつわかるようになってきた。しかし、どこで、どのような規模の地震がいつ起こるのか、地震予知は非常に困難な問題であった。

★ ある程度の予想はついたとして、不用意な発表(それも地震学の権威による発表)はパニックを助長しかねない。選択を迫られた大森の苦しい胸の内が探求されていた。

 

★ さて、古本で注文していた「日本文学100年の名作」(新潮文庫)の第6巻、第8巻、第9巻が届いたので、第9巻から堀江敏幸さんの「ピラニア」を読んだ。これは堀江さんの「雪沼とその周辺」(新潮文庫)にも収められている。

★ 町中華の店長と近くの信金職員のエピソード。店長は安田、信金職員は相良と言った。安田は自らの店を持つ前、ある中華屋で修業をしていたが、どうも筋が悪い。要領が悪いので厨房に置いてもらえず、出前を任されていた。信金の相良や、今は安田の妻となっている聡子とはこの出前が縁で出会った。

★ 同期の連中がみんな独立していくのに、安田だけは店に残り、師匠が病に倒れた後、店を引き継いだ。これといって料理へのこだわりがあるではなく、猛烈に勤勉というわけでもない。それでいて、安田の評判は悪くない。

★ 物語では相良の風貌が面白く描かれている。異様なおちょぼ口で、それゆえ麺類がうまくすすれず苦手だという。中華丼もレンゲではなくスプーンで食べている。

★ タイトルの「ピラニア」。安田は店の地下階で魚を飼っている。その中に知人から譲り受けたピラニアがいるのだ。

★ 何がという事ではない日常の風景だが、人物像やそれにピラニアの獰猛なあごまでが映像が浮かぶようだった。

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