★ 近隣の小中学校ではコロナが猛威をふるっている。学級閉鎖も聞こえてくる。マスクを装着している児童・生徒が少数派となり、当然のようにウイルスは活躍を始めたようだ。
★ さて、阿部牧郎さんの「それぞれの終楽章」(講談社文庫)を読み終えた。第98回(1987年)直木賞受賞作。巻末に「1991年5月28日読了」とメモしているから、再読になる。ただ、30代に読んだのと60代で読んだのとでは感慨が違った。
★ 主人公の男は、高校時代の友人の訃報を聞き、久しぶりに東北地方の故郷を訪れる。かつての日々を懐かしむと同時に、高校卒業後に友人たちが歩んだ道に心を痛める。そしてそれぞれが人生の最終章を迎えようとしている。
★ 終盤は、主人公が自らの人生を振り返る。エリート官僚でありながら戦争に翻弄され、紆余曲折の末、何とか東北地方の閑職にありついた父親。その父親に伴って主人公も京都から父の任地へと移住する。
★ 理想は高く持ちながらも、口下手で自分をうまく表現できない父親。やがて酒に溺れていく。そんな父親を嫌悪しつつ、自らの中に父親との類似性を認める主人公。父親を避けるかのように京都の大学に進学。卒業後は東京の企業に就職する。
★ それから30年。彼は小説家となり、痛む腰を抑えながらようやく安住の地を見つけたようである。そして、彼もまた終楽章を迎えようとしている。
☆ 主人公が生きた戦中、戦後と今の時代は大きく異なっているが、終楽章をいかに迎えるかという課題は時代を超えて共通のようだ。
☆ 「VIVANT」最終回の視聴率は20%近かったとか。果たして続編はあるのだろうか。「皇天親無く 惟徳を是輔く」がまだ回収されていないしなぁ。