★ 選挙のたびに、ある政党の人々が体の前に看板を抱えて、街頭活動をしているのを見る。確実に高齢化が進んでいる。
★ その風景を思い浮かべながら、倉橋由美子さんの「パルタイ」(新潮文庫)から表題作を読んだ。昭和35年に発表された作品。私は文末に「1987年7月3日」に読んだと記しているから、再読になる。
★ ある女子大生。彼女は「セツルメント」サークルに所属している。そのメンバーは「学習サークル」を組織して「労働学校」を運営している。
★ 目下の彼女の関心は「パルタイ」に入るかどうか。「パルタイ」に入るべく先輩らしき人物に指導を仰ぎながら「経歴書」を作成している。
★ 昭和30年代の雰囲気が十分に味わえる。「プチブル」という言葉は、当時はまさに侮蔑用語。彼女は「プチブル」と批判され、怒りに燃えている。(今の時代だと「ブルジョア」や「セレブ」は憧れであるけれど。私などはすっかり「資本主義」に洗脳され、毒されたのかも知れないが)
★ 「パルタイ」絶対主義はもはや宗教団体。自由を求めながら自らを拘束する「パルタイ」に参加しようとする主人公の心境が興味深い。
★ 「パルタイ」は、「さまざまな『掟』と『秘儀』の総体からなっていることは、わたしにはある種の宗教団体とおなじにみえるほどだ。その目的は『救済』であり、救済とは信じることだ」の一節は面白い。
★ 「パルタイ」に身を委ね、その教義に心酔してしまえばそれはそれで「救済」が得られたであろうが、彼女は最終的にはそれを拒絶する。「革命の必然性」を信じることができなかったからか。
★ 短い作品ながらとても面白かった。
☆ 最近では「ロマンス詐欺」などという言葉があるが、かつては、政治団体や宗教団体に「ロマンス勧誘」といったことがあったのかも知れない。
☆ 学生運動や革命運動、カルト教団をテーマとした小説に魅かれる。政治小説、企業小説と同様、ドロドロとした人間模様が楽しめるからだろう。