★ この世にはツイている人とそうでない人がいる。中には自業自得で落ちぶれる人もいれば、知らず知らずに転落の因をつくっている人もいる。また、真面目にコツコツと生きているのに報われない人もいる。
★ 髙村薫さんの「地を這う虫」(文春文庫)から「巡り逢う人びと」を読んだ。
★ 元刑事。警察が嫌になって退職したものの、35歳という中途半端な男にコレといった職はなく。結局おさまったのがサラ金の取り立て業務。それも、時には反社を使う会社だ。
★ 刑事の肩書がなくなると、その筋の見方も変わる。雇い主だから表では立てながら、腹では落ちぶれた男を嘲笑している。彼はそんなことを重々知りながら、なおプライドをもってその職責を果たそうとしている。
★ ある取り立て事案。借金のカタに土地や工場を奪うのは同郷の同級生。自らのすべてを奪っていく彼に同級生は笑顔で接する。その真意は。
★ 髙村さんの作品は短くても深い。