じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

絲山秋子「エスケイプ」

2018-05-24 22:35:58 | Weblog
☆ 絲山秋子さんの「エスケイプ/アブセント」(新潮文庫)から「エスケイプ」を読んだ。

☆ 男女のドロドロした小説に食傷気味だったから、こうした乾いた文体に清涼感を感じた。

☆ 主人公は40歳。20年間身を置いたセクトを離れて、妹が経営する育児施設に勤めることにした。職革(職業的革命家)からの転職。長年、連れ添った(?)公安警察官とも別れ、束の間の旅に出ることにした。どこに行く?夜行列車に乗って京都に下車した。

☆ 京都での日々。京大の吉田寮を訪れ、今は生死もわからない双子の兄弟の面影を追う。ふと知り合った偽神父の家に居候。自分の来し方を振り返る。

☆ 日本には革命も大規模な暴動も起きなかった。主人公のこの20年間は「革命ごっこ」だったのだろうか。ナルシズムだったのだろうか。

☆ 挫折の後に、再生はあるのだろうか。
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組織と個人

2018-05-24 10:01:22 | Weblog
☆ 財務省から森友学園との交渉記録が公開された。一部は既に破棄されたという。文書主義の行政で、文書改ざん、証拠隠滅は、まさに組織犯罪だ。

☆ 与党サイドは元理財局長にすべての罪をなすりつけようとしているかに見えるが、エリート官僚がルールを破ってまで何を守ろうとしていたのか。その点を考える必要があろう。

☆ 加計問題にしても、直接、総理大臣からの指示があったかどうかはわからない。むしろ有能なリーダーなら言質をとられるような発言は意図的に避けるだろう。「空気を読め」「腹を読め」「忖度せよ」ということか。独り言くらいは言ったかもしれないが。

☆ 問題が起これば、「遺憾ながらコミュニケーションがうまくいっていなかった」で逃げることができる。

☆ そう言えば、日本大学のアメリカンフットボール部の問題、結局、元監督は監督責任は認めたものの直接的な責任は否定し、直接選手に指示を出したコーチはコミュニケーション不足を理由にしている。

☆ 察するところ、根本には体育会系の絶対的な上下関係(服従ー隷属)があったのだろう。今回のケースがどうかはわからないが、大学入学がスポーツ推薦なら一層深刻だ。

☆ コーチの「つぶしてこい」は本音だったと思う。日常的な常套句だったのかもしれない。コーチが監督の歓心を得ようとしたのかどうかはわからないが、選手が正直に「つぶして」しまったから問題になってしまったということではなかろうか。

☆ 今回のケースは氷山の一角かも知れない。誰のためのコーチングなのか、何のための勝利なのか、考える必要があるのではなかろうか。

☆ ルールは大前提だという。それがゆがみだしているようだ。 
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映画「レッドオクトーバーを追え!」

2018-05-24 02:05:01 | Weblog
☆ 映画「レッドオクトーバーを追え!」(1990年)を観た。

☆ 1984年、まだ冷戦が続いていたころ、ステルス機能を持ったソ連の新鋭潜水艦が戦列を外れる。目的は何か。アメリカ攻撃か、それともという映画だった。

☆ ほとんどが潜水艦内という狭いセットでの撮影だったが、外から見た潜水艦の映像とうまく編集しており、迫力のある作品になっていた。ソ連の潜水艦の館長はショーン・コネリーが演じていた。存在感がある。
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重松清「ゲンコツ」

2018-05-23 19:03:11 | Weblog
☆ 重松清さんの短編集「ビラミンF」(新潮文庫)から「ゲンコツ」を読んだ。

☆ 主人公はニュータウンに住む38歳の男性。会社で中間管理職になりたて。本人曰く「中途半端な年齢」にさしかかっている。家に帰れば夫であり二人の小学生の父である。

☆ 荒れる街・駅前の様子は「ナイフ」と共通している。大人が子どもにおびえるという現実を暴露している。

☆ 主人公と同じ棟に住む中学生が荒れている。その仲間がニュータウンの入り口にたむろし、いたずらをしている。現場を目撃した主人公は彼らに声をかけるが・・・。

☆ 社会のひずみが子どもたちの荒れとして現象化しているように感じた。
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ラベルレス

2018-05-23 14:38:48 | Weblog
☆ アサヒがラベルのない「天然水」を売り出した。(当面はAmazon限定で)

☆ ラベルレスはありがたい。ペットボトルの回収日にラベルとキャップを外して出すのが大変だった。

☆ これは助かる。他の製品も追随してほしいものだ。
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羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」

2018-05-23 12:03:59 | Weblog
☆ 羽田圭介さんの「スクラップ・アンド・ビルド」が文庫(文春文庫)になっていたので読んだ。すごく良かった。

☆ 認知症の始まった祖父と同居する30歳前の男性が主人公。今は、その祖父と母と自分の3人暮らし。祖父は子どもたちの間でたらい回しされ、主人公の家に行きついたようだ。主人公は激務(ブラック)のカーディーラの仕事を辞め、今は就職浪人。専門職をめざして勉強をしているが思うようにいかない。それに祖父の介護だ。

☆ 思うようにいかないと「死にたい」と口にする祖父。いっそのことと思い、主人公は安楽死を計画する。

☆ 介護に疲れた主人公のイライラ感と冷淡な計画とは裏腹に、その外形的な行動だけを捉えれば、実に献身的だ。家族ゆえの暴言があり、家族ゆえの葛藤があり、家族ゆえの後悔がある。

☆ もはや機械的になった、祖父の「ありがとう、お願いします、すいません」のセリフが切ない。


☆ 私は父の介護を18年している。寝たきりになってからは8年だ。胃ろうを増設し、酸素チューブを装着し、痰は機械で吸引する。

☆ 胃ろうがない時代、食べられなくなったら人間は寿命だったのだろう。1週間から10日ほどで衰弱死すると言われた。それも天寿とあきらめるのも選択肢だったが、意識がはっきりしているのに、嚥下障害だけで自然死という名の安楽死を選択することはできなかった。

☆ 酸素にしても、呼吸不全になれば意識が衰え、やがては死を迎えるのだろう。しかし、苦しそうに呼吸する姿を見るに忍びない。わずか1リットルの酸素を補給するだけで、今では酸素飽和度が97%に保たれている。健常者と変わらない。

☆ 痰の吸引を怠れば、窒息するかも知れない。それはそれで仕方がないのだが、誤嚥性の肺炎を起こし(今までに何度も起こしたが)、熱を出したらこれも放置できない。鎮痛解熱剤で熱を冷まし、抗生剤を投薬することになる。

☆ 死ねない時代になってきた。延命に果たしてどれほどの意味があるのかはわからないが、最近は「生きている」というそのこと自体に何か意味があるのではと考えるようにしている。

☆ せん妄で夜中に何度も起こされ、訳の分からない要求をぶつけられ、愚痴を言ったかと思うとしおらしくなる。介護というのは想像以上に肉体的、精神的負担が大きい。これも「修行」と思って踏ん張らないと介護者が壊れてしまう。それに経済負担だ。気張らず、弱音を吐いて、誰かに助けてもらうのも必要なことのようだ。


☆ この作品は、介護のリアルをよく描いていた。
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日大・反則タックル問題

2018-05-23 09:59:21 | Weblog
☆ 日本大学・アメリカンフットボール部の反則タックル問題、記者会見した日大選手の追い詰められた言動を読み、中村文則さんの「A」(河出文庫「A」所収)という小説が思い浮かんだ。

☆ 日本軍、ある兵士が将校になるための根性試しとして拘束された捕虜を斬殺するというもの。上官たちの圧力、兵士の葛藤が描かれていた。

☆ 組織の圧力に追い詰められていく人間のあり様は時代は変わっても変わらないようだ。
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浅田次郎「告白」

2018-05-22 14:36:04 | Weblog
☆ ちょっとした昼休みの時間、30ページぐらいの短編がちょうどいい。

☆ 今日は、浅田次郎さんの短編集「月下の恋人」(光文社文庫)から「告白」を読んだ。浅田さんはどんな話でも心をしっとりとさせてくれる。

☆ 女子高生2人がハンバーガーを食べながらダベッている。梓と奈美。奈美は茶髪で厚化粧、スカートの丈も短い、不良と目されているタイプ。でも頭はいい。親友の梓にはとてもやさしい。心に刺さる言葉をしばしば吐くが。今日、梓は奈美に告白する。「父」が本当の父でないことを。

☆ 梓がいつも持ち歩く貯金通帳の束。彼女の成長に合わせて父が振り込んでくれているものだ。しかし、それにはある秘密があった。その辺りから、心に響いてくる。

☆ 途中に出てきた「行っトイレ」には笑った。オヤジギャク?

☆ 笑いあり、涙ありの浅田節。
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田中慎弥「共喰い」

2018-05-21 17:37:12 | Weblog
☆ 田中慎弥さんの「共喰い」(集英社文庫)を読んだ。後半の筆運びは見事だった。

☆ サディストの父親とその血を受け継いだ息子。母親は父親の暴力に耐えきれず離婚。継母は父親の暴力に耐えながら、子どもを身ごもったのを機会に家を出ていく。

☆ 父の毒牙は息子の彼女にも。そして近くの神社の祭礼、豪雨の中で終焉を迎える。激しい雨音、水墨画のように霞む風景、人間の業が淀んだようなどぶ川の匂い、五感が震える。もはや作品から逃れられない。

☆ 川辺を憎みつつ、川辺でしか生きられない人々。どぶ川のヘドロの匂いとそこに生きる命。どう猛、原初的、動物的な人間。ギラギラした命の喘ぎがムンムンと伝わってくる。

☆ 豪雨の後の静寂。悪臭を押し流し、新たな始まりを予感させるのが救いだ。
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川上弘美「消える」

2018-05-21 10:16:50 | Weblog
☆ 川上弘美さんの短編集「蛇を踏む」(文春文庫)から「消える」を読んだ。

☆ 「このごろずいぶんよく消える」から物語が始まる。長兄が消えたというのだ。消えたと言ってもその存在らしき気配は感じるという。こういう設定はカフカの「変身」のようだ。ところがこの家族は家族全体が何やら変形する。長兄の許嫁(後に次兄の妻になる)は、日々縮小していくし、婚姻が決まった主人公は日々膨張していく。

☆ 肉体と言った物質をもたない霊体の話のようにも思える。難しく考えれば「実存」とは何か。

☆ 家族にはそれぞれしきたりがある。これなどは現実をうまくデフォルメしているのかも知れない。
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