じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

半村良「雨やどり」

2018-07-28 17:30:18 | Weblog
☆ 半村良さんの連作短編集「雨やどり」(集英社文庫)から表題作を読んだ。

☆ 半村さんといえばSF作家だと思っていたが、艶っぽい作品を書いていたんだ。

☆ 新宿・歌舞伎町のバーのオーナーをめぐる物語。仙田は遂にマンションを手に入れた。ビルの4階の角部屋。荷物を入れてしまうと狭く感じたが、都心では仕方がない。エレベーターがないのが不自由だ。

☆ 雨模様のその朝、仙田は新聞を取りに1階まで下りて行った。そこに和服姿の女性が飛び込んでくる。雨宿りのようだ。よく見ると、知り合いの店で働くホステスだ。ということで、二人の話が始まる。

☆ 本編はほとんどが会話でつながれている。それが実に自然だ。飲み屋街で生きる人々と常連客の心温まる会話が弾む。

☆ いろいろな人生があるものだね。
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赤瀬川隼「消えたエース」

2018-07-28 13:53:58 | Weblog
☆ 赤瀬川隼さんの短編集「白球残映」(文春文庫)から「消えたエース」を読んだ。面白かった。

☆ ペナントレースで22勝を挙げたエース投手が「個人的な事情」で引退した。それから30年。高松でのオープン戦で元記者がそのエースを見かける。彼はその引退の本当の理由が知りたくて仕方がない。直接聞きたいが、元エースは大の記者嫌いと聞いている。自分も記者を辞めて30年。勇気を出して近づいていくのだが・・・。

☆ 野球を愛する男同士の会話に心が踊る。元エースが引退を決意した本当の理由とは、そしてドラマチックな展開に思わず笑顔がこぼれる。
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島本理生「リトル・バイ・リトル」

2018-07-28 10:20:23 | Weblog
☆ 島本理生さんの「リトル・バイ・リトル」(講談社文庫)を読んだ。

☆ この歳になるとこういう作品は実に「かわいらしい」と思う。孫の成長を見るようだ。

☆ 主人公はふみさん。高校を卒業したばかりだ。接骨院に勤める母と異父妹で小学2年生のユウちゃんとの3人家族。物語は、母が酒に酔って帰ってくる場面から始まる。勤め先がつぶれたというのだ。早速明日からの生活に直面する。さて、どうなるやら。

☆ この作品は作者が20歳の時に発表されたという。作者の等身大の感受性が心地よい。

☆ 成長しつつある女性の「日常」が描かれている。戦争や革命や虐殺や殺人が起こる話ではない。そういう意味では静かな作品だが、登場人物たちの内面はいわば「疾風怒濤」の時代なのだろう。壊れそうな緊張感がいい。

☆ エンディングもとてもさわやかだった。人生はまだ始まったばかりだ。little by littelで進んでいけばよい。そんな気分にさせてくれた。

☆ (それはまた、作家・島本理生の自分自身への「宣言」なのかも知れない)
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映画「砂の器」

2018-07-28 08:32:32 | Weblog
☆ 映画「砂の器」(1974年)を観た。3回目か4回目になる。だからストーリーはわかっているが、今回はデジタルリマスター版ということで、画像が鮮やかに蘇っている。

☆ 夏の暑さが出演者の汗やしぐさで伝わってくる。まだクーラーと言ったものが一部の裕福な家庭にしかなかった時代だ。警察署内の暑さ、犯人を追う刑事たちの熱が伝わってくる。

☆ 先ほど亡くなった橋本忍さんが山田洋次さんと脚本を担当、監督は野村芳太郎さん。新鋭のピアニストにはこれも先日亡くなった加藤剛さん。刑事役には丹波哲郎さんと森田健作さん。原作は松本清張さん。

☆ 名曲「宿命」を背景に、父子の巡礼姿を追うシーンは圧巻だ。セリフをなくすという大胆な脚本だ。

☆ 何度観ても素晴らしい作品だ。
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北原亞以子「恋忘れ草」

2018-07-27 19:21:12 | Weblog
☆ 北原亞以子さんの「恋忘れ草」(文春文庫)を読んだ。

☆ 男と女の「情」は時代を超えたテーマのようだ。浮世絵師のおいちは腕のいい彫師に惚れた。彫師もおいちの絵に惚れた。二人は所帯を持とうとしたが、彫師の別れた女が身ごもっているのを知って、男はその女と所帯を持った。

☆ 所帯は持ったも、おいちとの関係も続いていた。しかし・・・。 

☆ 江戸の下町を舞台に職人たちの息遣いが感じられる。男女の関係は実に艶っぽく書かれ、それでいて下品ではない。行燈の灯りが映す陰、部屋の四隅の闇、いい感じだ。
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「ちょい飲み」雑感

2018-07-27 18:23:46 | Weblog
☆ セブンイレブンの「ちょい飲み」が話題になっている。サーバーからつがれる冷え冷えのビールはさぞ旨かろう。居酒屋に寄るのは面倒だし、財布も厳しい。そんなとき「ちょい飲み」はありがたい。店側としてもビールと共におつまみも売れるだろう。

☆ 話題になりすぎて中止されたというが、確かに弊害も懸念される。まずは飲酒運転だ。缶ビールでも同じだけれど、店員が運転するかどうか確認できないだろうし、トラブルのもとでもある。コンビニ敷地内での酒盛りなんてこともあるかも。イートインのあるチェーン店は居酒屋化するかも。いっそ、駐車場に屋台を出せば、それはそれで趣はある。いずれにせよ売り上げは上がるが、リスクもありそうだ。

☆ ところでコンビニの勢いはすごい。コーヒー戦略は大成功。ドーナツはちょっとこけたが、フライドチキンは旨い。先日、某大手のフライドチキン専門店で買った。「国産」の品質にこだわっているのだろうが、値段の割に物足りなかった。それに比べて、コンビニのフライドチキンは旨い。

☆ 冬のおでんや肉まん。夏の定番は確かに穴場だ。かき氷、ソフトクリームなどのデザート類はすぐに思い浮かぶが、食べ物と言えば冷やし中華やそうめんぐらいか。日持ちしないモノはロスが多いし、冷や汁や冷たいお茶漬けなどおいしいけれど、一般受けするかな。
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逆走台風

2018-07-27 09:13:43 | Weblog
☆ 週末は台風が急接近するようだ。夏の台風は迷走するというがこの台風は逆走する。

☆ 地震、豪雨、猛暑そして台風。この天変地異は、何かの祟りか。こんな非科学的なことを考えては似非宗教の思う壺だが。

☆ 浸水や土砂崩れなどで、防災がダメージを受けている。被災地が心配だ。
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井上荒野「切羽へ」

2018-07-26 20:33:45 | Weblog
☆ 井上荒野さんの「切羽へ(きりはへ)」(新潮文庫)を読んだ。

☆ 恋愛小説、ヒューマンドラマといったジャンルだろうか。私は、新興宗教が国家転覆を図るような小説が好きだ。恋愛ものは「どうでもいい」「自分には関係ない」とシラケてしまうのだが、この作品には付き合わされてしまった。

☆ 3月に始まり、4月に終わる。離島に暮らす人々の1年が描かれていた。巻末に山田詠美さんの解説が添えられており、それ以上に付け加えることはない。概要だけ書けば、話者は島の小学校で養護教諭を勤める女性。画家の夫と暮らしている。学校には校長先生、教頭先生、そして友人の月江先生がいる。この月江先生には愛人がいて週末には本土から律儀にやってくる。

☆ この長閑ともいえるいえる島の小学校に新しく音楽を担当する石和という男の先生がやってくる。背が高くて人当たりは良くない。悪い人ではなさそうだが謎な存在だ。どうやら主人公の女性はこの先生に魅かれているようだ。

☆ さて、月江先生をめぐる三角関係は、大事件に発展。月江先生の愛人(本土さんと呼ばれる)をめぐる月江先生と本土さんの妻との修羅場。一件落着と思いきや、今度は月江先生と石和先生が怪しい関係になり、復活した本土さんと石和先生の大乱闘。このあたりの話の展開は面白い。構成の妙だと思う。

☆ そして最後はしっとりと。美しく終わっている。「切羽」とは炭鉱の一番掘り進んだ地点を言うらしい。「切羽詰まる」とは語源が違うようだが、切羽詰まった状況は共通しているように思った。

☆ 文章がうまく、面白かった。
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海老沢泰久「帰郷」

2018-07-26 17:05:09 | Weblog
☆ 海老沢泰久さんの「帰郷」(文春文庫)を読んだ。

☆ F1チームのメカニックに3年契約で選ばれた工員。レースとともに世界中を転戦し、緊張と充実した日々を過ごす。3年の期間が過ぎもとの工場に帰るが、刺激的な日々が忘れられず、日常のことには無感動になってしまう。

☆ 淡々とノンフィクションタッチで描かれているので読みやすい。レース前後の緊張感が伝わってくる。

☆ 鬱な日々は一種のPTSDだろうか。
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山本周五郎「おごそかな渇き」

2018-07-25 13:35:37 | Weblog
☆ 山本周五郎さんの短編集「おごそかの渇き」(新潮文庫)から表題作を読んだ。

☆ 山本作品なので時代物かと思って読み始めたが、時代は昭和30年代半ば、高度経済成長から取り残されたような寒村が舞台も作品だった。家業が没落し行き倒れとなった40代の男が、助けてもらった男の14歳の娘と東京を目指すというもの。その中で、人間の本性や宗教のあり方が語られている。

☆ 絶筆なので、作品はまだ序盤で終わっている。家出とも誘拐とも(あるいは駆け落ちとも)思える二人の道行きが、これからどうなるのか、そこは全く見当がつかない。

☆ 「初めに飢えがあった」「川には魚がいた」といった章題は聖書を思い浮かべる。
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