夜、ヨメはんの三味線を借りて、星川沿いのベンチで弾いた。
いつも聞きに来てくれていたおじさんとまた会った。
「最近見ねえが、ちっとはうまくなったかい」
大阪に転勤になったんです、など、しばらく話をした。
道南口説を弾く。気づいたらケンジさんが向かいのベンチに座っていて驚く。
「店で弾きません?用意してきますね」
それからとある居酒屋さんでしばらくぶりに弾かせてもらった。
また水ナスをごちそうになった。
...おいしいなあこれ。
会社の出張用のPCでメールチェックしようと思って、ふたを開けたら息苦しくなった。
手を離すと元に戻る。
何度か繰り返してやめにした。
メール、たまってるんだろうなあ。
手を離すと元に戻る。
何度か繰り返してやめにした。
メール、たまってるんだろうなあ。
店の引き戸を開けたら、カウンターにママさんひとり、本を読んでいた。
「あれ?久しぶり。どうしたの?」
「休暇。病気になっちゃいました」
今日あった事を話す。
「そういうお客さん、最近結構多いんですよねえ...はい。」
枝豆が出てきた。
もうそんな季節か、と思う。もうそんな季節です。
高澤君を呼んで、他のもう一人のお客さんと夜遅くまで他愛の無い話をし、みんなでアイスクリームを食べた。
今日の出来事はもう忘れる事にする。
体はなんともないのだ。
ただ休めばいいんだったら簡単な事だ。
梅田のディスカウントショップで新幹線のチケットを買って、そのまま新大阪に向かった。平日の昼過ぎで、新幹線ホームは空いていた。自由席で帰ろう。
先頭車両のところで列車を待つ。
列の前に若い中国人のグループ、自分を挟んで後ろが大阪のサラリーマン二人連れ。
中国語と関西弁って似てるなあ、とぼーっと思う。
アメリカ人はどっちがどっちかわかんないだろうなきっと。
新幹線の中ではとにかく眠くて、名古屋を過ぎるあたりまでずーっと眠っていた。
夜、熊谷の駅についた。
以前、よく行ってた居酒屋さんへ向かう。
「いらっしゃい。...あれーっ!」
「休みもらってさ。帰ってきちゃった」
「三味線は?」
「持ってない」
「飲んでって」
ケンジさん元気そう。
厨房の人は何人かは、前と同じ顔ぶれで、何人かは新しい人だった。
新しい料理長さんに水ナスをごちそうになった。
フルーツみたいでうまかった。なんか元気出るなあ。
「こっちにいる間に一度、弾きにきてくださいよ」
そう言ってもらってうれしいっす。
しばらく話をして店を出て、群馬行きのバスに乗る。