山浦清美のお気楽トーク

省エネ、農業、飛行機、ボウリングのことなどテーマ限定なしのお気楽トークができればと思っております。

朝日新聞に掲載された、田中優氏の主張について

2011-12-22 | 政治・経済・社会

 本日の朝日新聞朝刊の「原発列島ニッポン-コストを考える(中)」で田中優氏の主張を拝読いたしました。この中で次のような主張がなされておりました。

-以下引用-

 北海道を除けば電力消費のピークは夏場の、酷暑の平日の午後1~3時です。この時間帯の消費の9割は事業者です。このときだけ事業系の電気料金を高くすればいい。電気消費全体の4分の3が事業者ですよ。家庭と同様、使うほど高く、節電するほど安くなる料金体系に変えればピークは下がるわけです。

-以上-

 これを読んで少々疑問が生じました。9割というのが先ず引っかかります。余りにも極端な数値だと思われます。どの資料を参照されたものか知りたいと思います。そこで一応調べてみましたところ資源エネルギー庁「夏期最大電力使用日の需要構造推計(東京電力管内)」というのが見つかりました。これが正しいかどうかは分かりませんが、家庭部門の割合は30%となっております。田中氏の数値と余りにもかけ離れております。

 次に家庭と事業系の電気料金体系に関する主張がなされておりますが、これは全く理解できません。このことは以前にも「九州電力の15%節電要請について」で指摘しております。

 電気料金は家庭用も業務用も基本的には「基本料金+電力量料金」で計算されます。詳しくは「電気料金のしくみ」をご参照ください。

 ここで、九州電力の単価をみてみましょう。色々なメニューがありますが代表的な例(家庭(個人)用事業用)とします。

 電力量単価は、家庭用の単価が割高になっておりますが、基本料金単価を比べると事業用の単価が家庭用の約6.9倍(力率割引を考慮すると約5.9倍)になっております。ここで家庭用は1kVA(10A)で表記されておりますが、これは事業用の1kWに相当します。(力率100%の時1kVA=1kWとなります。)

 即ち、家庭向けの料金体系は電力量料金の占める割合が高いので、家庭用は「5倍使えば、ほぼ5倍に」、「事業系はほとんど変わらない。」といった主張につながるのでしょう。

 更に言えば、事業用は基本料金の算出のもととなる契約電力は、最大デマンドという30分間の平均電力の内、一年間の最大値によって決定されることになります。即ち、既にピークカットすれば電気料金が安くなるという料金体系になっております。ですから今般の電力不足問題が起こる以前から、ピークカットは積極的に取組まれております。

 確かに電気料金体系を見直すことによって、省エネ(節電)に対するインセンティブを与えることは必要なことと考えますが、一方では電気料金体系は産業構造に与える影響もありますので、正確な情報をもとに大いに議論する必要があると思います。

<参考> 「デマンド管理による省エネルギー