河村顕治研究室

健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究に取り組む研究室

保健福祉研究所棟開設記念講演会

2008-06-15 | 保健福祉研究所
本日は保健福祉研究所棟開設記念講演会が行われる。
私の役割はシンポジウムで研究プロジェクトの概略を説明するほか、来校するマスコミの対応である。

保健福祉研究所のホームページからマスコミに説明しなければならない研究所の内容などを抜粋して整理しておくことにした。

保健福祉研究所は、保健福祉に関する学術研究・開発を行い、その発展に寄与することを目的として設立された。
より具体的には21世紀の長寿社会における保健と福祉の課題に対して、自然科学から社会科学に至るまでの幅広い分野の総合的・学際的研究を目的として平成11年4月に設立された。

当初は学内の研究室を研究所として運営されていたが、平成19年度に文部科学省が実施している私立大学学術研究高度化推進事業(http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/002/002/004.htm)の一つであるオープン・リサーチ・センター整備事業に採択され、総事業費約4億円で研究所が建築整備された。

このオープン・リサーチ・センター整備事業では「学外の幅広い人材を受け入れる」、「研究成果等を広く公開(貴重な学術資料等の保存・公開を含む)する」など、オープンな体制の下で行われるプロジェクトの実施に必要な研究施設、研究装置・設備の整備に対し、重点的かつ総合的支援が行われている。

研究体制としては基礎と臨床の2つのプロジェクトが「健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究」という統一テーマの基に行われている。
現在、学内では基礎7人、臨床11人の研究体制でそれぞれのプロジェクトが動いている。

健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究
研究目的
疾病や外傷の結果として残存する障害を克服するためのリハビリテーションに関する研究は、健康寿命の延伸に直接結びつくものであるにもかかわらず、ほとんどが臨床レベルでの研究にとどまっている。

これからの研究の方向性としては、リハビリテーション効果のエビデンスを細胞・分子レベルでの解析や、コンピューターシミュレーションによるバイオメカニクス解析にまで求めていくことが重要である。本研究では既存リハビリテーション技術の解析・普及だけでなく、細胞・分子レベルでの解析を行い、リハビリテーションのエビデンスを提示すると共に、老化の仕組みや老化を抑制するメカニズム解明のための最先端基礎科学研究と、バイオメカニクス研究に基づく新しい技術開発を総合的に行うものである。
さらにリハビリテーション先端科学研究を通して、この分野で不足している基礎研究を行いうる研究者、高度専門職業人を養成する。
また、研究成果はインターネットや学術論文として広く世界に公開し、研究所を地域の健康増進の拠点として、得られた最新の知見を地域に還元していく。

研究計画・研究方法
プロジェクト1(基礎研究)
細胞・分子レベルでの加齢・疾患障害の予防治療法の開発
組織培養および動物実験を主な研究手法として加齢・疾患障害の予防治療法の開発を目指す。組織培養としては、主に加納らが開発した特殊な細胞内シグナル伝達変異細胞を利用して研究を行う。この特異な培養神経細胞は薬剤やリハビリテーションで用いられる様々な物理刺激に鋭敏に反応して、その効果検証を行えるという優れた特性を持っている。この細胞を始め、様々な細胞内シグナル伝達変異細胞を用いて分子生物学的に解析を行うことにより、加齢・疾患障害の予防や治療に効果がある薬剤や物理刺激を見いだすことが可能になる。また、我々は各種物理療法の効果を培養細胞と人工骨のハイドロキシアパタイトを用いて迅速に調べる方法を開発してきた。動物実験としてはリハビリテーションで特に問題となる廃用性筋萎縮や関節拘縮・骨粗鬆症についてモデル動物(マウス・ラット)を作成して研究を行う。
 
プロジェクト2(臨床研究)
健康増進と障害予防のためのバイオメカニクス・臨床研究
これまで生活習慣病対策と比較して対策が遅れていた運動器疾患に注目して、筋力が衰え骨関節に障害を抱える高齢者においても安全性と有効性が認められつつある Closed Kinetic Chain (閉運動連鎖)の理論をさらに探求し、これを臨床応用するために新たな評価法・運動療法やリハビリテーション機器を開発する。現在既にClosed Kinetic Chainでの評価訓練器を開発しているが、さらに電気刺激などの物理刺激の併用による運動効果を高める方策を研究する。その理論的根拠はプロジェクト1(基礎研究)の成果に求める。研究手法としては3次元動作解析、筋電図、関節音計測さらにコンピューターシミュレーションなどの手法を用いる。このようなバイオメカニクス研究の成果を基に、青少年に対してはスポーツ時の外傷予防のためのプログラム指導を行い、地域高齢者には健康教室を開催して栄養・運動指導を行い理論の検証を行う。

2つの研究プロジェクトの連携について
例えば、電気刺激を利用したリハビリテーションは低周波治療器による物理療法など古くより広く行われてきた。研究プロジェクト2で、新たな電気刺激のリハビリテーションへの応用方法を模索し、細胞・分子レベルでどのような電気刺激が最も生体に有効なのかという根拠を研究プロジェクト1に求める。さらに、2つの研究プロジェクトが有機的に連携したケースでは<細胞研究→動物実験→臨床研究→細胞研究>という研究サイクルをモデル化し持続的な研究を行っていく。

コメント
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