「妻を看取る日」(新潮社)を読み終えた。著者の垣添忠生さんは国立がんセンターに長く勤められ、名誉総長になられた人だ。
垣添さんは大学紛争で喧しい東大医学部時代に青医連に関わり、医局で異端を貫く。12歳年上の既婚者と出会い、結婚して幸福に暮らすが、結婚40年目に奥さんの肺に小細胞がんが見つかり、闘病生活の末に永久の別れが訪れる。酒に溺れ、悲嘆の日々を送るが、時間をかけながら精神的に立ち直り、「妻がいちばん喜ぶのは、私が自立してしっかり生きることだ」という境地に至るまでの心の変遷を切々とつづられている。
同じようにカミさんを失った身なので、垣添さんの心の痛みがよくわかるし、立ち直るまでの苦悩もよく理解できる。医師として多くのがん患者と関わり、見送ってこられたがん専門医であっても僕と同じように苦しまれたことに人間は同じなんだと思う。
これほど赤裸々に心の変化を綴られた垣添さんの勇気に感動する。
いい本に出会えた。