渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

テーパー

2022年06月19日 | open
 
(テーパーと勾配の違い)
 
フィッシングロッドとビリヤード
のキューでは「テーパー」が極め
て重量な幹となってきます。
特にビリヤードキューにおいては
木製シャフトの場合。
 
キューのシャフトで、A型のように
先に行く程細くなるテーパーで直線
のようなシルエットの物はAテーパ
ーとか呼ばれています。円錐のよう
な形。
それに対して根元の部分から少し
先に行って先端1/3程が同直径の
円筒状になって伸びて行く物は
プロテーパーとか呼ばれています。
また、Aテーパーとプロテーパー
のミックスのようなテーパーもあ
ります。
木製シャフトのテーパーは、シャ
フトが使い手の狙いに合わせた絞
り度数を持つのが最適で、逆にい
えば、使い手が必要な求める動き
をテーパーの設定によりセッティ
ングで出して行くものです。
ここらあたりが出来合いの吊るし
既製品の初めから決められたメー
カー標準テーパーとは異なるところ。
 
昔の80年代キューは、メーカー品
でもテーパーが太めの製品が多か
った。
それは包丁や鉋の初期出荷と同じ
で、使用者が磨いだり削ったりし
て好きな刃先やテーパーにで
きる
為でした。
しかし、いつの間にか包丁や刃物
が最初から箱出しでズバズバ切れ
るような刃付けがつけられたよう
に、キューのシャフトもどんどん
最初から細くなり、箱出しで使え
るようになった。吊るし背広の
ような既製品の完成です。それが
いつ頃からか主流になった。
個人ビルダーのキューでも、シュ
レーガーのように「使うあんたが
削ってくれろ」と最初からごんぶと
シャフトの作もありますが、大抵
はマスプロメーカーだろうと、個
作だろうと、独自理論で個別
オリジナルテーパーにして売り
すようになった。
 
TADのキューは、使いこなすと
ベラボーに切れるのですが、しば
き叩きをやると手玉はどそっぽに
向かって飛んで行く。
しっかりとしたしなやかなキュー
出しで、手玉を押し出すような
ストロークで撞けばTADでなくば
出せない玉筋を描けますが、力
任せのシバキ倒しだと嫌がるキュ
ーです。ハイパワーの2ストレー
シングマシンのような。ヌボーと
出力が変化する遅いマシンでは
なく。
使いこなすとキビキビととんでも
ないパフォーマンスを発揮する。
だからそこ、上級者たちは誰でも
使いこなせるようなオートマでは
ないTADキューを好む人たちが
多かった。
キューの性格としては大雑把な
アメリカ人向けではなく、繊細な
操縦を職人技的にこなす日本人に
多くTADが好まれたのも、そうし
たTAD独自の切れ味と撞球性能が
あったがゆえでしょう。
 
ただ、70年代、80年代のプレー
ヤーの誰もが経験しただろう失敗
がある。
それは、自分のキューのシャフト
を改良しようとサンドペーパーで
削って細くしたりテーパーを変え
たりするのですが、削った物は元
には戻らないので、削り過ぎてし
まう失敗があちこちで見られた、
という事。
もう、これは本当にいろいろあち
こちで見られました。
テーパーで先を細くすると玉離れ
は早くなり、トビも減少するので
すが、ある程度を超えると、全く
腰が無くなって手玉が逆にブレブ
レのキューになってしまう。
まるで、標準の太さのテーパーな
のに手玉が全く安定しないリチャ
ード・ブラックのダメキューのよう
になってしまう。どのキューでも。
結果は、やり過ぎの為、シャフト
の機能保持の範囲を超えて、使え
ないシャフトにしてしまう。
実に多くの人がこれを経験してい
ます。私も友人も先輩も後輩も、
他店のプレーヤーもみんなそう。
一度は経験する。
 
今は、シャフトをいじる事さえ
自分ではしないどころか、タップ
も自分では交換できない人たちだ
らけなので、そうしたチューンの
やり過ぎでキューのシャフト一本
を駄目にしてしまう事は回避でき
てはいるようですが。社会全体と
しては。
今の人たちは、自分で自分の物を
作り上げて行く発想も視点も無く、
出来合いの物、与えられた物をあ
れこれ買い揃えるのが主流のよう
です。
でも、そうだから、テーパー対応
も出来なければ知見を獲得する事
もできない。自分でやった事の無
い未体験ゾーンだからです。
チェリーボーイズオールヴァージ
ニストみたいなもん。
でも、現実世界は二次元ヲタアニ
ではないので、知見と判断力を得
るには、知ろうとする事と、自分
でトライする事無くして物を識別
判断できる要素は到来しない。
 
木製シャフトいじりが廃れたのは、
ソリッドシャフト使用率が今や全
体の1割程度となった世相とも関係
しています。
何たって、張り合わせベニヤシャ
フトは削ったらダメだから。接着
度数を減少させるから。なので
基本は箱出しのまま。シャフト
ニスをほんの軽く落とす程度。
 
ハイテクシャフトは道具として不
完全品なので、確実に先角割れま
すけどね。どのハイテクシャフト
も軽量化の為に先角は極薄ですか
ら。まず割れる。
そういうの「良いシャフト」とい
えるのかなぁ、と思います。
いつ割れるか分からないのだから。
それが来るのは大切な試合中かも
知れない。
そうなったらアウトですよ。
ジャミングする自動小銃しか持って
いなくて、それで激戦の戦場で銃撃
戦に臨むようなもので。
タップは腕があればその場で交換で
きても、さすがに先角は即交換は
無理だし。
まあ、だからプロたちはスペアシ
ャフトを持っているのですが。
てか、世界トッププロはハイテク
ではなくソリッドシャフトを多く
が好んでいるけど(笑
ハイテク大好きは日本人でしょう
ね。変質してしまった後の日本人。
 
カーボンは品質が安定しているの
で新時代の本当の意味での未来シ
ャフトかと思います。
量産できるし。
でも、原価数百円の物に6万円も
7万円も払ってまで金太郎飴を買
う気は私にはおきないなぁ。
物は良くとも、量産工業消費商品
である点と、職人の技法が捨象さ
れた「冷たい物体」であるという
点で、私はカーボンはこの先も
使わない。
グローブなども絶対に使わない。
ハヤリに乗るのは、一番生き方と
てダサいと思っているし。
 
クラシックのピアノの名曲の演奏
に接して、人は感動するでしょう?
ピアノはピアノとして完成されてか
ら、何も変わってませんよ。
そして、名曲の譜面も変質はしない。
そこに、人が忘れてならない大切な
ものがあると思えるのです。
 

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