ケン坊のこんな感じ。
キーボーディスト、川村ケンのブログです。




時だけは、どうしたって止まりませんものね。

そういう年代になってきたとは思うものの、こういう、その作品の数々に大変に感銘し、またお世話になったといっても過言ではない方々のお見送りに際し、やはり心に去来するものは、都度とても多くございます。

僕ぐらいの世代で、Y.M.O.を一度も聴いたことが無いという日本人はまずいないと思いますし、

同じく、この世代でキーボードをやっているような人間で、1枚もレコードやアルバム(今はCDですね)を買ったことがないという人もいないんじゃないかと思うくらい、影響力は凄まじいバンドだったと思います。

1枚目のシングルだった「テクノポリス」が6年生の時でした。

衝撃的でもありましたが、当時の気持ちを正直に思い出せるのですが、

「これ、知ってる!聞いたことある!」

でした。

勿論、そんなわけないのですよ。

でも、そんな既視感を、デジャブをリアルに感じるくらい、小6だった僕心にまっすぐに入ってきたのです。

自分のエピソードではありますが、これだけでも、本当に凄いことだと思います。どこにでもいるような小学生にまで、あの音楽は直撃したのですから。

 

音楽は勿論、ビジュアルも凄かったですね。中学生の頃、音楽はやっていないようなのもまで含めて、何人もテクノカットの友人がいました。

そして、一緒に「増殖」や「スネークマン・ショー」に笑い転げ、休み時間には教室で暗唱して、・・・今でも覚えていますもの。

クラスの女の子たちが「君に、胸キュン」を歌って、僕は、遡って買ったファーストアルバム「YellowMagicOrchestra」が大好きで、家に帰ると毎日のように聞きながら漫画を読んでいました。

今でも、その漫画とファーストアルバムの曲たちは、頭の中でリンクしてしまっておりまして、曲を聴くと、漫画のシーンやセリフが浮かんでしまうほど刷り込まれてしまいました。当時の、部屋や机、壁に貼ってあったポスターや、ステレオセットなどの懐かしい風景と共に。

当時は、アルバムをカセットに入れて聞いていましたので(アルバムを何度も聞くと溝が無くなると信じておりまして、もう本当に買った時に1度かけるだけ。もったいないことです)、でも、カセットの独特のコンプのかかった音質ですっかり慣れ親しんでしまい、その後、CDで買い直した時にあまりの音の良さや分離、ステレオ感に「僕の知ってるY.M.O.と違うな……」と感じてしまった程。

でも、あのメロディや、フレーズは、本当に根っこのなっているのだと、ここ数日、改めて、何曲かつま弾いてみたりして、強く実感しています。

ファーストの中でも、何だか不思議なフワフワした曲想でクセになってしまった「Simoon」(この曲の作曲は細野さんです)、ああ、オーギュメントコードの響きとか、間奏のシンセの少しジャジーなテイストとかを聴きますに、こうして大人になって惹かれる響きの多くは、もうこの頃、Y.M.O.を通して身体に入って来ていたんだ・・・と、納得。2-5-1の進行も出てきていたのですね。

そして勿論、この頃はテクノと言われたシンセの響きには、冨田勲さんの影響も感じますが(メインシンセの一つ、Moogのマニピュレータが―同じ松武秀樹さんです)、個人的には先にY.M.O.だったのだなあ、と。

映画館に観に行った「戦場のメリークリスマス」。超有名なあのテーマ曲。この4度から始まる(いわゆる4-5-3-6)コード進行が、この後、随分日本の音楽の主流にもなり、今や「王道進行」という名前までついているくらい。でも、そんな世俗的な感じが全くせず、ただただ美しいのは、坂本さんのボイシングが、とても綺麗だからでしょう。このミステリアスな響きを、小学生、中学生、高校生にもズドンと届けた力、功績は、本当に凄いと思います。

大学の時、ゼミで制作していた僕が脚本を書いたラジオドラマで、主人公が恋人に会うために刑務所から脱獄をして、雨の中、裸足で逃亡をするというシーンでに使わせてもらったのが、坂本さんが作曲された「ラストエンペラー」のサントラから「」でした。当然、今でも大好きです・・・。もう、映画を超えてしまったくらい、一生好きだと思います。

本当にありがとうございましたという気持ちで、また、ジャケットも秀逸な、Y.M.Oのファーストを聴いてしまいます。

これを坂本さん、幸宏さん、細野さんがスタジオで作っている時は、まだこれからくる凄まじいブームを、Y.M.O.の音楽を、誰もしらないのです。

そんな思いで聴くと、どれだけY.M.O.が革新的で、また、確信的だったか、つくづく思い知らされ、気持ちよく打ちのめされるのす。

 

東風(Tong Poo)」は、イントロのフレーズのカッコよさ。もう、今でもそこら中でキーボーディストは弾いてしまう名フレーズです。

短い間に、転調が凄い。どこか和風でありながら、でもゾクゾクするエキセントリックな、こんなフレーズ、ちょっと考え付かないですよ。

そして間奏の、後のアメリカバージョンで初披露となった吉田美奈子さんのボーカルと絡む坂本さんのピアノの超絶クールなカッコよさ。

50年、もしかしたら、100年、先取りしていたかもしれません。

今でも、ほら、鳥肌が立ちますもの。

 

R.I.P。



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