「川村くん、今日家にいるのかな?」
昨日のことです。
気づきましたら、こんな留守電が入っておりました。
師匠であります厚見玲衣さんからでした。
着信は夕方。僕が気づいたのは、大学を出たときでしたので、もう20時過ぎだったのです。
あわててかけ直しますと、
「今日、〇〇っていうレコーディングスタジオに行ったんだけど、そういえば川村くんの家が近いな、と思って」
といっても、クルマで20分くらいの距離はあるかと思います。
「CD、渡したかったから、もし家にいたら、と思って。でも、ポストに入れておいたからね!」
なんと、お疲れのところ、わざわざ、遠回りして僕の家まで届けにきてくれていたそうなのです。
走って家に帰り、ポストを覗き込みましたら、
・・・はたして、確かに、ありました。
「MOONDANCER&TACHYON LIVE!2013 LIVE at Rock Joint GB-2013.5.18」
うおー。凄い。
色々と、なにもかもが凄い。
もうね、一枚目のディスクを入れて、1分半ほどのゆったりとしたSEを、突然切り裂くハモンド。
トラック2、の最初の一分で、
もう、僕の顔はにやけっぱなしでした。
えー、
これぞ、そう、
僕が、心奪われ、憧れた、
厚見さんの音世界。
僅か一分で、絶対に誰とも聞き間違うことのない、この音色。このフレーズ。この世界感。
ハッキリ言って、通してなんて聴くのがもったいないくらい。
ハモンドC3、ミニモーグ、メロトロン、ほかにも、涎が出るような古く、音の良い最高のアナログシンセ達・・・あああああ。
1分ずつ、ニヤニヤとため息をつきながら、楽しみたいくらい。
でも、抗えない(笑)。
止まらない。
こんなにも、自分にとって心地よい音、これぞ快感。
……あああああああああああ。(←変でしょ(笑))
全て素晴らしいです。
「Ba-Ra-Sin-Ju(薔薇心中)」のマイクロモーグのソロは・・・おそらく世界中探しても、このCDでしか聴けないものです。
こういうことをですね、本物のアナログシンセで、かくも素晴らしくプレイして聴かせてくれるしてくれるキーボーディストというのも、
世界中探しても、厚見さんしかいないと思いますので、当然なのですが。
もうね、気持ちよさで、髪の毛が全部、逆立ちます(抜け落ちなくてよかった)。
あー、気持ちいい。
しかしですね、
さらなる衝撃があるんです。
はい、ご覧ください。
「Photos by Ken Kawamura」
って、書いてあるんですよ!
こんなに上に!
「Produced by Rei Atsumi」というクレジットよりも、上にですよ!
どういうことなんですか、これは。
どうしたらいいんですか、これは。
「川村クンの写真、ジャケットに使わせてもらうね」とまでは聞いていたのです。
当日、実は・・・他にもカメラマンさんもいたのですよ。
なので、僕は邪魔にならないよう、基本的に二階にある照明さんの横にずっといて、「ヒキの(ステージを俯瞰した)写真」ばかり撮っていたのです。
あとは、会場に着いた時に僅か20枚程度だったと思いますが、ステージに上げてもらいまして、少しだけ何枚か。
後日、写真をお渡しするときに、
「すみません。今回は、ステージに全然近づけず、同じような構図のヒキの画ばかりになってしまってますが・・・よろしければご覧になって下さい。」
という感じで、おそるおそる、お渡ししたのです。
おそるおそる、というのは、なんか、せっかく「川村クン、好きに写真撮っていいからね!」なって言ってもらって、
もしかしたらいくらかは期待してもらったのかもしれないのに、全然動けなかったし、バリエーションが作れなかったなあ・・・と(以前のVOWWOWの再結成の時は、結構動き回って撮ったので・・・まあ、ステージが大きかったというのもありますが)。
でもね。
厚見さんが届けて下さったこのCDに入っていたカラーブックレットを見ましたら。
全ページに、とてもキレイにレイアウトされた写真が沢山、ありまして、
よく見ましたら、全部、僕が撮ったものだったのです。
普通は、数枚押さえておくものですが、時間が無かったこともありまして、「多分、このカット一枚しか撮ってなかったよ」というような写真なども、
ちゃんと見つけて、選んで使って下さっているのですよ。
あるいは、露出の設定を間違えて、ビヨーンって光が伸びてしまっているような、ある意味サイケではあるのですが、僕の意図からしたら「失敗しちゃった」というような写真まで、
うまいこと、アレンジされて使われているのです。びっくりです。
結果、ブックレット、そして見開きのCDジャケットの中も、とにかく、このCDで使われている全ての写真が、
僕のカメラで、僕がレンズを通して見た、厚見さんの写真であり、厚見さんの機材の写真なのです。
(あ、勿論、バンドメンバーさんも写させていただいておりますよ)。
厚見さんがデビューした最初のバンドであるMOONDANCERの、32年ぶりの再結成のライブであるこのCDを聴きながら、
ブックレットを開いて最初の写真には、僕は、何度見ても思わずにやけてしまいます。
同時に、僕は間違ってなかったよ、と思えるのです。
ちゃんと、正しいものを、好きになれたんだ、と。
そして、その他、所せましと小さく、でもとてもきちんとレイアウトされた写真を一つ一つ見ておりますと、
「ああ、これを選んでくれたんだ」・・・と、なんだか、胸に来るものがあります。
このライブの日付は、2013年、5月18日。
そう、昨年の厚見さんの誕生日に行われたライブだったのです。
……ライブ後の打ち上げでのバースデーケーキ、それを吹き消す厚見さん。
この写真は、「あ、撮っておこう」と、あわててカメラを出して撮った、どちらも一枚きりの写真です(なので、大きく引き伸ばしてみると、実は少しブレております・・・)。
こういうのもね、ちゃんと、使って下さっているのですよ。
爆音で、聴いて下さい。
僕の嬉し涙が、風圧で吹き飛ぶような、爆音で、お願いします。
最後に。
「NO OVER DUB!」(後から一切、音を足したり、修正したりしていない、という意味です)
この一言の意味、その重みは、今の時代、とてつもないことなのですよ。
その上で、このプレイを細かく聴いていくと、
そこにあるのは、・・・人間なのですよ。
厚見玲衣さんという、人間が、見えてくるんですよ。
もう一度書きますが、
やっぱり、僕は間違ってなかったのですよ。
正しいものを、好きになれていたんです。(断言します)
しかし、最後には、ともかく、これに尽きます。
ハモンドって、やっぱり最高だ!ミニモーグって、やっぱり最高だ!
あー、キーボードって、なんてかっこいいんだっ。
(勿論、厚見さんだから、なんですけれどもね。でも、がんばろう。がんばらにゃーいかんですよね。)
ではー。