キース・ジャレットのコンサートの初日の4月30日を前に、
ようやく、「キース・ジャレット―人と音楽」を読み終えました。
この本は、もう絶版になってしまっていて、中古でもとんでもない価格がついていたこともありまして、
読んでみたいなあ、と思ってはいたものの、なかなか手が出せずにいたのです。
ある日、ふと見たとき、お手頃な価格だったこともあり、ポチッしたわけですが、
実は、この本を手に入れ、読み始めたのは、もう一昨年、2012年のことでした。
緑ちゃん倶楽部で、キースについての課外授業を行った少し前の夏のことだったと思います。
この本は、キースの唯一の評伝(人物評を交えた伝記)です。
事実に基づいて、キースや周囲の人間の言葉も多く引用して、
キースの人生環境や、その時々での言葉を持って、特に音楽に関する考え方を多く知らせてくれるものでした。
生い立ち、家庭環境から始まり、学生時代の出来事や、その後のミュージシャンとしての活動の中での、
CDを聴いているだけでは、決して知ることのできないことばかり。
何と言いますか、
もっとも、これはキースに限らずなのですが、
・・・若いころというのは、その「作品」だけでよかったんですね。
逆に言えば、作品と、それを受け止めている自分だけで、一杯になっていた、ともいえるかも知れません。
もっと言えば、その奥にある本質に気づけなかった。
あるいは、興味が(持て)無かった。
しかし、自分もいいト〇になってきたからかもしれませんし、
生きていると色々と、気づくことがありまして(笑)、
結局は、音楽は(音楽に限らず、何でもですが)、つまりは「人」なんだな、と思うようになりました。
例えばこの場合ですが、
キースの音楽は、キースの音楽であるのみならず、それは、キースという人そのもの、なんですね。
ですから、キースという人の人生なり、その考え方を形成してきたもの(のたとえ一部だとしても)を知ることで、
「なるほど、そういうことか」
とわかることが沢山ありました。
勿論、全部はわかりませんが、
でも、経緯が分かるだけでも、理解が深まります。
例えば、あるアルバムの録音時のことについて、
「気温が2度程しかなく、吐く息が真っ白になる」
という状況で録音されたものだ、と知ると、
こちらの想像力が、自然により強く働くようになる気がするのです。
あるいは、キースが父親になって最初に録音したアルバムはどれだったのか、などを知ると・・・「ほほう」と。
ちなみに、記念すべきキースのソロ・ピアノ・インプロビゼーションとしてのデビュー作「フェイシング・ユー」がそれだったのです(なるほど、4曲目には「マイ・レディ,マイ・チャイルド」という曲があります)。
面白いですねえ。
この本では、キースの作品の理解に関することだけでなく、
「音楽というもの」について、また、「仕事として音楽をすること」についてなど、
様々な角度から、非常に多くの示唆があり、大変な勉強になりました。
手に入れて、課外授業の元ともなりました「ケルン・コンサート」の部分まで読んで、そこで止まっていたものを、
今年に入ってまた読み始め、数日前に、最後まで読み切りました。
読むからには、しっかり読みたい、と思っていたがゆえに、なかなか手が出せなかった、というのは言いわけですが、本当にそうなのです。
流し読みにはしたくなかったので、「いつか、時間ができたら」と思っていたのです。
読後、二年前に、自分で赤線を引っ張っていた部分を、読み返してみました。
大切な部分だと思って、線を引っ張ったわけですが、
「そうか、あの頃は、ここに反応したのか」
と自分の事も面白く思いました。
実質、一年半ですが、
・・・一年半という時間は、短いようでいて、長いのだな、とも思いました。
この先、また一年、一年半、二年・・・と経っていくうちに、
自分がどういうこと考える人間になっているのか、どういうことに心を動かされる人間になっているのか、楽しみでもあります。
世の中は、人間は、実に、面白いですね。
そして、来週30日の初日から、約10日間で3回、キースの東京公演の全てのコンサートに行きますが、
本を読んだことで、これまでで、一番楽しみにもなりました。
知ることは、やっぱり、面白いです。
しかし、無で。
初心者で。
ではー。