【兵庫県の県花、近畿以西の瀬戸内、太平洋側に群落を形成】
日本固有のキク科の多年草。10月下旬から12月にかけて、直径3~4cmの白花を付ける。花弁の枚数は13枚から20枚ほどと様々。中央には黄色の管状花が密生する。草丈は60~90cm。たまに外側の花弁が黄色のものもあり「キバナノジギク」と呼ばれている。ノジギクは栽培菊の原種ともいわれる。
ノジギクの命名者は植物学者・牧野富太郎博士。約90年前の1924年に発見し、兵庫県姫路市の大塩・的形地域が国内最大の大群落地であることが確認された。ノジギクは近畿以西の瀬戸内、太平洋側の海辺や内陸の山麓に自生する。兵庫県が北限とされており、県は約60年前に「県の花」と定めた。2006年に兵庫県で開かれた国民体育大会もその県花にちなみ「のじぎく国体」と名付けられた。
ただ開発に伴って野生種は減少傾向。岡山、香川、熊本各県では近い将来に絶滅の恐れが極めて強い絶滅危惧Ⅰ類に指定され、兵庫県でも準絶滅危惧種になっている。姫路市内には大塩・的形、馬坂峠、日笠山などに群落があるが、地元では有志が「大塩のじぎく保存会」をつくり保護活動に取り組んでいる。ノジギクの変種にアシズリノジギク、セトノジギク、奄美大島のオオシマノジギクなどがある。
「父母が殿の後方(しりへ)のももよぐさ 百代(ももよ)いでませ我が来るまで」(万葉集・防人の歌)。私が戻ってくるまでいつまでもお元気で――。この歌に登場する「ももよぐさ(百代草)」については菊や露草など諸説あるそうだが、菊が最も有力という。奈良・春日大社内の万葉植物園ではこの歌とともに「ももよぐさ」をノジギクとして紹介している。