【原産地メキシコ、日本には明治時代に渡来】
クリスマスシーズンに室内を彩る鉢物といえば、やはりこのポインセチアだろう。トウダイグサ科の低木で、真っ赤な〝花びら〟と緑色の葉のコントラストが美しい。ただ花びらのように見えるのは蕾を包む葉が変化した苞(または苞葉)と呼ばれるもので、本当の花は慎ましげに真ん中にある小さな黄色の部分。ポインセチアは観葉植物の1つというわけだ。
原産地はメキシコを中心とする中南米。花の名は19世紀の米国の外交官・ポインセット氏に由来する。1820年代に初代メキシコ大使として赴任した時、自生していたこの花を見つけ、米国に持ち帰って改良を重ねた。その結果、20世紀に入って欧米でクリスマスの花としてもてはやされるようになった。英名では「クリスマスフラワー」とも呼ばれる。日本への渡来は明治時代の1880年代といわれるが、急速に普及するのは戦後になってから。
和名は「猩々木(しょうじょうぼく)」。その真っ赤な色から、酒を好み赤ら顔で赤毛の空想上の動物・猩々にちなんで名付けられた。しかし、この和名が使われることはほとんどない。品種改良で赤のほか、白やクリーム色、赤・白の混色、斑入りなど色柄も多彩になってきた。原産地では常緑で高さが5mにもなるが、園芸品種は寒さに弱いため温室で鉢物が栽培される。日の当たる窓際に置くと長持ちするが、冬越しはなかなか容易ではない。
ただ沖縄や小笠原などの暖地では露地植えでも育つ。群生地として有名なのが宮崎・日南海岸の堀切峠。宮崎交通グループの創業者で「宮崎観光の父」と称された故岩切章太郎氏(1893~1985)が、花の少ない冬の日南海岸を彩る花としてポインセチアの植栽に取り組んだ。季語は冬。「宴果てぬ猩々木(ポインセチア)の緋に疲れ」(文挟=ふばさみ=夫佐恵)。