【泉屋博古館の「梅」、黒川古文化研の「松」と連携】
大和文華館(奈良市)で特別企画展「竹の美」(30日まで)が開かれている。泉屋博古館(京都市)の「梅の美術」展(8日~5月6日まで)、黒川古文化研究所(兵庫県西宮市)の「松―美と徳の造形」展(4月19日~5月18日)との連携企画。3館が松竹梅からテーマを1つずつ選び、各館が収蔵する絵画や陶磁器、工芸品などの東洋美術品を相互に融通して紹介する。
大和文華館の本館中央には年中青々とした竹が空高く伸びる吹き抜けの空間がある。「竹」のテーマは同館にとってもふさわしい。竹は力強い生命力や高潔なイメージから、古くから美術品のモチーフとして取り上げられてきた。中国では「竹」と「祝」の発音(zhu)が同じこともあって吉祥を表すものとしても重視された。会場には竹が描かれた花鳥図や墨竹図、陶磁器、竹の工芸品など69点が並ぶ。
「楊柳観音像」(上の写真㊧=一部)は朝鮮・高麗時代の作品。竹は清浄な場所の象徴として、中国では古く唐時代から観音菩薩の背後や脇に描かれ始めたという。「四季花鳥図押絵貼屏風」は江戸中期に京都で活躍した渡辺始興の作品。花鳥画12面のうち1面に成竹1本と筍2本、水辺の亀を描く。静謐な中に春の息吹と旺盛な生命力がほとばしる。「竹燕図」(馬遠款、上の写真㊨=一部)は中国・南宋~元時代の作品。
「檀鴨・竹狸図」の筆者、森徹山は森狙仙の養子で、円山応挙の下で修業を積んだ。左幅の竹狸図は竹林の中で冬毛のタヌキが鼻先のオケラと戯れる構図。繊細な筆致は動物画を得意とした徹山らしい。「胎笑大方(いしょうだいほう)竹石図扇面」と「胎笑大方竹梅図扇面」は富岡鉄斎筆。鉄斎は知人への贈答用として多くの扇面を描いたという。狩野探幽筆の「古画縮図(花鳥)」や司馬江漢筆の「竹図」も出品されている。
陶磁では中国・景徳鎮や日本、ベトナムの皿や水指など、工芸品では刀のつばや笛、筆、腕枕などが並ぶ。「竹林猛虎図鐔(つば)」(上の写真㊧)は江戸後期の小田直堅の作。中国・明時代の「白磁洞簫(どうしょう)」(写真㊨)は竹製を模した縦笛。洞簫は日本の尺八の祖といわれる。竹の描き方を詳しく説明した江戸時代の指南書「賞奇軒墨竹譜」や「墨竹指南」も展示中。「墨竹指南」は墨竹画を得意とした画僧玉潾(1751~1814)が初心者向けに著した。