【渡辺南岳「鯉図」、雪村「花鳥図屏風」など涼やかな作品36点】
大和文華館(奈良市学園南)で初夏の到来に合わせた特別企画展「涼を呼ぶ美術―滝・鯉・龍―」が始まった。水辺の情景や生き物などを描いた涼やかな絵画や工芸品を集めた作品展で、円山応挙の『双鯉図』や応挙晩年の弟子、渡辺南岳の『鯉図』、雪村周継の『花鳥図屏風』(重要文化財)など、参考出陳も含め36点が展示されている。7月3日まで。
応挙の『双鯉図』(泉屋博古館蔵)は2匹のコイが笹の枝に刺され吊り下げられた構図。1匹は尾を力強く振り上げており、活きの良さが伝わってくる。応挙の作品はほかに参考出陳として『鱈図』『雪汀双鴨図』『四季山水図屏風(春景・夏景)』の3点。南岳の紙本淡彩『鯉図』(黒川古文化研究所蔵、上の作品)は六曲一双の屏風で、右隻に2匹のコイ、左隻に巨木の松の幹と1匹のコイが描かれている。右隻のほぼ半分、第1扇から第3扇までを占める1匹の大きなコイは全長が約1.7mほどもあろうか。その迫力に圧倒される。
雪村の墨画『花鳥図屏風』は水辺のカモやシラサギを描いた六曲一双の屏風。雪村は雪舟に私淑していた。狩野元信筆と伝わる『奔湍図(ほんたんず)』『瀑布図』は岩間を下る激流や滝壺に激しく落ちる水音が今にも聞こえてくるような気配が漂う。元信は狩野派の祖といわれる狩野正信の長男。これらの作品のうち『花鳥図屏風』や『奔湍図』は数年前の水墨画名品展などでも目にしたが、「涼」をテーマとする今展にふさわしい作品といえるだろう。
絵画では他に伝狩野源七郎筆『叭々鳥図(ははちょうず)』、狩野探幽筆『古画縮図(花鳥)』、江戸後期の『長谷寺縁起絵巻』『道成寺縁起絵巻』など。狩野源七郎は永徳の弟とも息子ともいわれる。絵画以外では青木木米作『赤絵龍文盃』や中国・景徳鎮窯の『紫釉雨龍盃』などのほか、〝涼を呼ぶ衣装とうつわ〟として『琉球紅型(びんがた)衣装』や『藍色薩摩切子小瓶』、オランダ18世紀の『東印度会社帆船図硝子酒盃』なども展示中。